Recondite - Iffy

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  • InnervisionにReconditeの『Iffy』はおあつらえのサウンドだ。Lorenz Brunner(Recondite)というプロデューサーはカメレオンのようなところがあり、サウンドに一貫性はあるものの、1つのスタイルにずっとしがみつくようなことは決して無い。Acid Testからは陰鬱なシカゴ・サウンドを、Dystopianからは疾走系テクノを、そしてHotflush(英語サイト)からは感情豊かな大バコ仕様のチューンを発表し、その全てで彼のエッセンスを妥協することなく表現している。しかし『Iffy』では、逆にBrunnerがこうした特性に飲み込まれてしまっているようだ。というのもReconditeにとって3枚目のアルバムとなる本作はInnervisionsのヒット・トラックのようなサウンドだが、どうもおまけで作った感じがするのだ。 Reconditeの無駄のないプロダクション、そしてInnervisonの大バコで映えるエモーション性を組み合わせた結果、濃厚過ぎる味付けになっている。クリーンなメロディ、完璧な作品、そしてクラブやフェスティバルでのサウンド・システムで最大限のインパクトを生み出す周波数帯域の広さ - Brunnerによる整然としたプロダクションは時として深みの無さを露呈することがあるようだ。今回の収録曲は風通しのいいパーカッシブなサウンドとメロディアスな王道の展開と共に滑り込んでいく。震えるシンセ・コードが刺激する高揚感を、リバーブがさらに増幅しているのだが、本作で特筆すべきなのはそれくらいだ。先行シングルとして発表された"Levo"はスポーツ・カーのコマーシャルにでも使われそうなトラックだ。3つの音程から成るメロディは大きな変化の無いまま、これでもかと感情を主張してくる。ある意味、聞いてて楽しげなトラックだ。むしろ、これで楽しげにならない方が難しい。しかし、個人的にはBrunnerは微細なサウンドをマンモス級の鳴りに仕上げることにアイデアを費やしているような気がする。 『Iffy』で一番輝いているのは、Brunnerがこうしたフェスティバルの雰囲気から離れた場所を探求している時だ。ぐらぐらとバランスを取りながらゆっくりと忍び足で展開する"Tame"は『On Acid』のBサイドをハイレゾでリマスターしたようなトラックで、一方、"Jim Jams"での微細な変化にはReconditeのいつものミニマルな特性が感じられる。しかし、本作の大部分は"Levo"のような、踏みつけるビートとなんとなく神秘的なメロディを使っているトラックばかりだし、そうしたトラックにはそれほど一体感が無い。Innervisionsのサウンドにとって必須な要素が最もピュアな形で表出しているのだが、Ten Wallsの"Gotham"のようにトラックを際立たせる音楽性や未知の要素が無ければ、作品は行き詰ってしまう。
  • Tracklist
      01. Baro 02. Levo 03. Tame 04. Garbo 05. Buteo 06. Duolo 07. Konter 08. Steady 09. Glint 10. Jim Jams
RA