Conforce - Travelogue EP

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  • Boris Bunnikが手掛けるプロジェクトConforceから届けられた最新EPからは、かつてなく気持ちよさそうな彼の姿が感じられる。しかし、どうやらそれは諸手の剣のようだ。「Travelogue」のニュアンスの効いたテクノには活き活きとしたライブ感が与えられ、作品の反復性によって容易くリスナーを包み込む。しかし本作には、何の効果も生み出していないのに悦に浸っているような場面がある。収録トラック4曲はどれも直線的な勢いではなく微細に変化を繰り返すグルーヴを優先する方向性で構築されているが、Bunnikの即興的なアレンジがミックスの中に埋もれていなければ、きっと素晴らしく機能していたことだろう。 Bunnikが最近Delsinから出した「Depth Over Distance」や昨年の秀作『Kinetic Image』(英語サイト)ではシンセのメロディと空間的なパッドがトラックを肉付けしていたが、Transcendentから発表となる本作ではそうした要素が大幅にそぎ落とされ、がらんとした空間に響き渡るリバーブとノイズによって置き換えている。"Phase7"では、意図的に遅くされたパルス音が、周囲から聞こえてくる囁きと頻繁に変化していく単音ベースラインで支えされているのみだが、早目のテンポと作り込んだディテールを用いた”Informatica"の方が上手くベースラインを活用出来ている。ハイライトである"Coast To Coast"と"Zero Five Eight"はしっかりと組み込んだリズム要素を追加で重ね合わせており、前へと進んでいく勢いが増している印象がある。さらに"Coast To Coast"には鮮やかなメロディまでも織り込まれている。Bunnikはテクノを制作するにあたって様々なモードを持っている。そのことに疑問の余地は無い。しかし結局のところ、そこに一貫性が無ければ「Travelogue」をベストの仕上りにすることは出来ないだろう。
  • Tracklist
      A1 Phase 7 A2 Informatica B1 Coast To Coast B2 Zero Five Eight
RA