Oren Ambarchi - Quixotism

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  • 『Quixotism』は47分間ノンストップで続く作品だ。そのサウンドは2年間に渡って数々の場所でレコーディングが行なわれている。こう書くと滅茶苦茶に思えるかもしれないが、オーストラリアの実験音楽界のベテランOren Ambarchiの手にかかれば、何とも美しく流れる作品に仕上がるのだ。『Quixotism』は正確にはソロ作品ではなく、Jim O'Rourke、Thomas Brinkmann、アイスランドのオーケストラ、そして日本人タブラ奏者U-zhaanなど多くのアーティストをフィーチャーしている。このように全く異なるコラボレーション相手のサウンド、そして別々に行われたレコーディングをAmbarchiは相当な注意を払って織り込んでいるため、『Quixotism』は1回のレコーディングのように聞こえるのだが、この点はおそらく本作で最も印象的な特徴かもしれない。 このアルバムで唯一コンスタントに使われているのはThomas Brinkmannによる静止ノイズのようなパルス音だ。2倍速の早さで鼓動する電子心拍音となっているが、全くブレずにどこか柔らかくざらついた音をたてており、錯聴効果が生まれている。ある時には音飛びしているようであり、またある時には他の要素と一緒にゲル化しながら分厚く目の眩むようなリズムを作り出している。第1部で中心的要素となっているBrinkmannのビートは、徐々に背後へとフェード・アウトしていき、より主張力のある第2部がスタートする。ここでは『Clicks & Cuts』スタイルのグリッチ音を感じさせている。このグリッチがさらに色濃く反映している第4部は、バネのようなパーカッションで出来たワイヤーフレームを使って簡潔に仕上げられている。この素晴らしく奇妙なドラム・サウンドは打楽器奏者Matt Chamberlainによるもので、第3部でも存在感を感じさせている。本作で実質上の中心部となっているのはこの第3部であり、Ambarchiのギター・サウンドを加えた柔らかなテクノが広がる高原風景を演出している。 『Quixotism』の第4部までは微かに躊躇している感がある。しかし一方で、最後に迎える14分間に及ぶ第5部を聞くと、それも納得だ。U-zhaanのタブラとEybind Kangのヴィオラが包み込む瑞々しく瞑想的なサウンドへと滑りこんでいるのだが、第4部での厳格な奥地を通過した後だと、なおさら安堵感が感じられるのだ。従来から様々なレコーディング手法を用いて実験を行ってきたアーティストにとって、挑戦的なアプローチにも関わらず自然なサウンドを実現した『Quixotism』は新たなシンボル的作品となるだろう。
  • Tracklist
      01. Quixotism Part 1 02. Quixotism Part 2 03. Quixotism Part 3 04. Quixotism Part 4 05. Quixotism Part 5
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