Adam X - Irreformable

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  • Adam Mitchellは20年に渡って唯一無二のテクノ道を歩んできた。ブルックリンでの初期ウェアハウス・パーティーから、最近のTraversable Wormhole名義でのレコードまで、広範に見たとき彼のスタイルが原因となり異端児となってしまった時でさえ、彼は自身の考えに真摯に従ってきた。彼の作品は時代感を反映することもあれば、そうではないときもある。しかし心の底から生まれた音楽だということは常に保証されていた。 奇しくもMitchellが切り拓いたインダストリアルに影響を受けたテクノが流行する中、Adam X名義として6年ぶりとなるアルバム『Irreformable』が到着する。このタイミングは偶然かもしれない。しかしAdam Xのイメージと言えば、腕を突き上げたくなるボディミュージックを通過した轟く強烈なサウンドだが、それは6年という歳月を待つだけの甲斐があるものだ。"Interchanges"と"Catenary"は驚異で満たされているにも関わらず、ゆっくりとして且つしなやかだ。しかし"Binary Possession"に至るまでは、高速で荒々しい骨の軋むような雰囲気の中にしっかりとリスナーを引き付けている。Mitchellによる恐ろしい声が殺し屋のような感覚をはっきりとトラックに与えており、一方でサイレン音と金属的なテクスチャーによる"On The Verge Of Decimation"は深く掘り進みながらゆっくりと進化し、同じく超越的で肉体的な罰を与えているかのように感じるポイントにまで達している。 "Sheer Insanity"はリバーブに浸し込んだ弾力性のある超ド級トラックだ。Perc『The Power & The Glory』での一番良い場面と核となる部分で通ずるところがある。ノイズ/テクノの辺境から現れる最も狂った音楽と比べると、『Irreformable』に収録されているトラックのほとんどは確かにワイルドであることが多いのだが、ダンス・フロアでの機能性のためにしっかりと抑制されているようだ。そんな中、タイトル・トラック"Irreformable"は本作の他のトラックとは対照的に、UFOや電子音のせせらぎ、そして彼方の宇宙といった古臭いサンプルを用いている他、ダンス・ミュージックにおいて最も過度に使われているアイデアである正当なアフリカ系アメリカ人伝道師のサンプルを活用して、真の意味での怒りを効果的に伝えようとしている。 全てが臨界点にあるような強烈なトラックを経て辿り着く終盤の4トラックには整然としたアイデアが詰まっているが("Small Black Object"はディストーションとシンセによる素敵なデザートと言ったところか)同じ高みには達しているとは言えないようだ。とは言え『Irreformable』は聞いていて楽しいし、これぞラップトップ制作のグリッド感を削ぎ落とし、活き活きと生命が息づく混沌とした1つの世界へと変容したテクノなのだ。本当に必要になってくるのはこういった音楽だろう。
  • Tracklist
      01. Interchanges 02. Catenary 03. Binary Possession 04. On The Verge Of Decimation 05. Sheer Insanity 06. Irreformable 07. In A Race Against Time 08. Tornado Warning 09. It's All Relative 10. Small Black Object
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