Ryo Murakami - Spectrum EP

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  • 2007年のデビュー以降、所謂ミニマル・ハウス/テクノに系統を成す音楽を発表してきたRyo Murakami。よく言われているのが、2013年にセルフ・レーベルを立ち上げて発表した『Depth Of Decay』にて彼の音楽が大きく変化したということだ。ビートを大胆に取り除いたことが、そうした印象を抱かせるのかもしれないが、このアルバムに至る兆候は、その数年前から既に表れていたように思う。例えば彼の2011年のトラック"Monophonic"でのブレイクではノイジーに歪んだシンセにダビーなエフェクトが施されていたし、さらに遡り2009年の"Underworld"は音数ではなく質感の変化にフォーカスしたトラックだった。Ryo Murakamiが以前のインタビューで自分自身では意識していなかったと語っているように、こうした変化は時間の経過と共に自然に起こったのだろう。そしてセルフ・レーベルで完全にディレクションをコントロールするようになったことで、この流れが「自分の内面を掘り起こすような」楽曲として結実したのが先のアルバムだったのだと思う。 Soul People Musicのコンピレーションに提供した1曲を経て今回Meakusmaから届けられた「Spectrum EP」は『Depth Of Decay』の発展形だ。"Contagion"には音の向こう側に新たな音が、そして様々な倍音が存在しており、自然界と同じように意識を少し別の方向に傾けても、必ず何かしらの音がそこには生息している。それは3拍子の"Statical"においても同様で、山深い場所にある湖からゆっくり立ち上がる蒸気のように、幽玄なシンセと残響音が漂っている。両トラック共に各素材の鳴りが明瞭で質感の変化が活き活きと伝わってくる。本作でもう1つ話題となっているのが、10年以上ぶりの楽曲となるPorter Ricksの"Statical"のリミックスだ。灼けるような硬質リバーブ/ディレイを幾重にも重ねることで生まれるうねりは、当時のファンにとっては嬉しい限り。
  • Tracklist
      A1 Contagion A2 Statical B1 Statical (Porter Ricks Change Of Tide Remix)