Arca - Xen

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  • Alejandro GhersiがArca名義で制作するトラックは構造やリズムが一般的なアイデアとは懸け離れていることが多い。UNOから発表した彼の初期作『Stretch』(英語サイト)シリーズでは人間の声を病的で従順なサウンドにしていた。そして言うまでもなく、Kanye Westの『Yeezus』がその後に続き、"I'm In It"や"Send It Up"といった邪悪で歪んだ唸りをあげるトラックでGhersiを聞くことが出来る。そしてFKA twigs(英語サイト)との作品も同じく挑戦的だった。身悶えする電子音が25分間に及ぶ"&&&&&"は『Yeezus』が弾き出した全意識に対する回答のようであったし、『Xen』でも同様の不規則な方向性が取り入れられている。『Xen』という名前はGhersiの別人格から名付けられた。「Xenは男の子でも女の子でもなくて、単にその存在が不快でもあり魅力的でもあるんだ」と彼は最近Faderのインタビューで語っている(英語サイト)。この美と醜のコントラストこそ、今回の奇怪に曲がり不可解な40分間に渡ってGhersiが探求していることなのだ。 Ghersiのサウンドに取り組む方法は従来のそれとは一切異なる。"Slit Thru"は根本的にはトリップホップだが、『Xen』全体から飛び出しているように感じるのは単純にこのトラックだけ非常に普通のサウンドだからだ。本作は毎回聞くたびに驚きのある掴みどころのないレコードだ。Ghersiの不器用なソングライティング・スタイルに魅了されることもあれば、いらだちを覚えることもある。いかなる場面においても彼は全てをコントロールしているのは明らかなのだが、そのせいで"Sad Bitch"や"Family Violence"のような美しい曲が移ろいやすく感じるのだ。この2曲では熱狂的で急激な展開の中にバロック調のクラシックなタッチがあり、その底流を他の要素と同じくらい素早く流れている感情が曲名に反映されている。さらにはモダン・ヒップホップ界の悲しい男のペルソナを非の打ちどころのないまでに痛ましいシンセ音と完璧に鼓動するドラム・パターンによってからかっているかのような"Lonely Thug"も収録されている。しかし、外見のようにこのトラックはシンプルではなく、卑猥でおどけたGhersiの「空想上のキャラクター」をもとにしているのだ。彼の音楽のキモはここにある。つまり、聞こえているサウンドよりも常に複雑な内容を持っているということだ。 Ghersiが持つ最も魅力的な性質は常に掴みどころの無いことだ。結局『Xen』とは流動性と自己発見の物語なのであって、どんな人でも他人から押し付けられているアイデンティティを超越出来るように、音楽もまたそうなのである。その結果、本作はみんなが望むような形のアルバムでもなければ、その点において数分程度の楽曲である以外の何ものでもない。途方もない影響力を持ったアーティストたちを手掛ける(次はBjörkを手掛ける)著名なプロデューサーであるArcaが抱えている期待は、同世代の(このレビュー執筆時にGhersiは24歳)アーティストの多くならば震えあがることだろう。しかし、そんなことは『Xen』からは分からない。Arcaの他作品と同じく本作も唯一無二であり、そして傑出しているアルバムだ。
  • Tracklist
      01. Now You Know 02. Held Apart 03. Xen 04. Sad Bitch 05. Sisters 06. Slit Thru 07. Failed 08. Family Violence 09. Thievery 10. Lonely Thugg 11. Fish 12. Wound 13. Bullet Chained 14. Tongue 15. Promise