Various - The Backpack EP

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  • テクノやハウスというダンス・ミュージックにおいては、今尚畏敬の念を込められるように聖地化されているデトロイトだが、その評価の多くはその実日本や欧州など遠く離れた地からである。その結果として欧州のレーベルがデトロイトの音楽をピックアップする事は少なくなく、例えばフランスのVibes And Pepper Recordsから派生した新興レーベルであるD3 Elementsもその一つだろう。 本作はレーベルにとって三枚目の作品となるが、Mike ClarkやTerrence ParkerにBrian Hardenなどデトロイトやシカゴの実力者を集めたスプリット盤となっており、その内容からレーベルの方向性も伝わってくるショーケース的な意味合いが強い。敢えてベテラン勢が集められたのもその意志をより強く宣言する為ではないかと思うし、収録された作品も斬新性というよりは時代に左右されない普遍的な良質さを強調している。例えばHardenによる"String Vibe"は優雅なピアノのコードと透明感のあるストリングスによって、空高く飛翔する高揚感を感じさせるテック・ハウスで底抜けにポジティブだ。Clarkも展開のあるキーボードが実に音楽的で、生っぽい質感を打ち出したデトロイト・ハウスの"Nu Day"を提供している。Sean Deasonによる"Beautiful 1"はよりフロア志向で、叙情性を含みながらもパーカッシヴなリズムを主軸にミニマルな機能性が強いだろう。そして本作はテクノやハウスだけでなくヒップ・ホップも収録されており、デトロイトのローカルで活動しているZhao-Skiが提供した"Ova The Limit"は、ざっくりとしたロービートと甘酸っぱいメロウな上モノを用いたヒップ・ホップでほっと心が落ち着く楽曲だ。本盤で異色なのはハウスDJとして名高いParkerだろうか、愛くるしいピアノのリフと心温まるフルートを用いながらも激情を発するダウンテンポの"Lonely World"を披露しており、テクノ/ハウスだけでないデトロイトのルーツを伺う事が出来るだろう。どれも確かに新しさという成分は皆無ではあるが、各アーティストの個性が存分に発揮されDJにとっても有効となる作品であり、D3 Elementsが注目に値するのも納得の一枚だ。
  • Tracklist
      A1 Mike "Agent X" Clark - Nu Day A2 Zhao-Ski - Ova The Limit A3 Terrence Parker - Lonely World B1 Brian Harden - String Vibe B2 Sean Deason - Beautiful 1
RA