Phil Gerus - Opposites Left Together

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  • 東京在住のPhil Gerusは、エレクトロニックR&B界にひしめき合う名前の1つだ。切なさを讃える自身の歌声ではなく、Gerusは第三者の声を加工している。歌という構成にこだわらない姿勢は、James Blakeの初期作を思わせる。Blakeの12インチがクラブにおけるダイナマイトの導火線となり、どんなことでも起こりうるのだ、という感覚を与えていた一方で、Gerusの音楽は保守的で緩やかな振る舞いだ。George FitzGeraldのレーベルManMakeMusicからは初のリリースとなる「Opposites Left Together」は、彼の作品の中で最も人目に触れることになるであろう1枚だが、本作でのGerusは、浅い場所で水遊びをして満足しているように見える。 "Adorn Your Ankles"は、本作のスタートを切るには魅力的なトラックだ。優しく奏でられるサックスとビンテージ・ファンクなシンセが個性となった、さすらいの曲だ。しかし、こうしたアイデアは、実際に感情に訴えるものを送り出す、というよりも、単にシックな印象を与えるものとして認識されるだろう。同じことが"Kissing This And That Of You"にも言える。作りかけのような印象を与えるこの曲は、全ての要素がそこにあるのだが、しっかりと正しく配置されていない。タイトル・トラック"Opposites Left Together"に関しては、未完成のディスコ・エディットだ。他よりもファンキーな"Hold Your Tongue And Let Me Love"は、しっかりとした屋台骨が好印象を生み出しているが、過度のフィルター処理によって残念な結果になっている。唯一"Voice To Voice Lip To Lip"だけは、完全に作り上げられたトラックだ。弾むビート、ゴスペルのボーカル、スムーズな展開を持ったこのトラックこそ、期待していたGerusの音楽だろう。未完成かやり過ぎか、本作の残りのトラックは、そのどちらかに聞こえる。
  • Tracklist
      A1 Adorn Your Ankle A2 Hold Your Tongue & Let Me Move B1 Kissing This & That Of You B2 Opposites Left Together B3 Voice To Voice Lip To Lip
RA