Angel – Terra Null.

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  • AngelはIlpo VäisänenとSchneider TMことDirk Dresselhausによる共同ユニットだ。2人は長きに渡ってこのプロジェクトで活動している。Väisänenはおそらく今でもPan Sonicのメンバーとして有名だろう。2人は共にドローンをベースに殺伐とした電気音響音楽を制作している。2011年にレコーディングされたという『Terra Null.』はEditions Megoから彼らの最新作となるLPだ。本作では、2人に加えてHildur GuðnadóttirとLucio Capeceという才能あるエクスペリメンタル・アーティストが参加している。「強欲と文化進化論における声明」をテーマとした本作は、挑戦的でタイトにコントロールされた作品であり、深く聞き進めていくにつれ、さらに素晴らしく、そして刺激的に感じられるものだ。 GuðnadóttirとCapeceの参加は『Terra Null.』が持つ"流れ"にとって不可欠なものだ。1時間強の収録時間の中に、4つの長尺トラックが収められ、Guðnadóttirは、3トラック目までボーカルとチェロを担当している。Guðnadóttirは、Angelから頻繁にリリースしている存在だが、Capaceはというと、今回のプロジェクトには比較的、後になってから参加したようだ。とは言え、全くの新人というわけではなく、Mika VainioやVladislav Delayとコラボレーションを含む多くの経歴を持っている。クラリネットとサックスを担当している彼は『Terra Null.』の後半2曲にて強固な意志を示している。 アルバムのスタートを切るのは26分間に及ぶ壮大作"naked Land"だ。序盤の展開はおそらくアルバム全体の中でも最も発展的なものだろう。Dresselhausによる漂うギターの旋律と、滞留しながら若干のリズムを刻む物憂いなチェロのサウンドが用いられている。このギターは古い西部劇で使われていたとしても、おかしくないものだ。そして、VäisänenとDresselhausによる鬱蒼としたアレンジによって覆い尽くされるトラックは、ギター・ノイズとエフェクトが深くかかったチェロが密集する中を掻き分け、漂いながら下降していく。その後、至福にも近い感覚にまで上昇していき、最終的にはメランコリーに沈んだ空気に包まれている。"Monolake"におけるサステインの聞いたサウンドの1つとなっているのが、Guðnadóttirによるクリアでシンクロナイズしたボーカルの抑揚だ。この人間味のあるタッチは、トラックが持つ文脈の中では、もはや天上からやってきたもののようにさえ感じる。 "Colonialists"ではCapeceが加わり、アーティスト4人全員が登場となる。音程が下降していく電子音が隠し味となっているこのトラックは、リードとチェロの組み合わせがメインにフィーチャーされ、止まることなく縮小していくかのような感覚をもたらしている。最後に収録され、最もアグレッシブなトラック"Quake"では、Capeceの演奏によって、高域で轟くノイズの響きに影響を与える不安定な要素が持ち込まれている。前述のアルバムのテーマを考慮すれば、この広大な構造、力強いクライマックス、そして脆く脱力したエンディングは、持続不可能なシステムが必然的に迎える暴力的な崩壊を描き出していると言えるだろう。個人的には後半2トラックの強烈なカタルシスが好みだが、攻撃的なドローンを求めている人にとっては、『Terra Null.』は収録時間以上の価値があるに違いない。
  • Tracklist
      01. Naked Land 02. Monolake 03. Colonialists 04. Quake
RA