DJ Rashad - We On 1

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  • テキサスの新レーベルSouthern Belleの1枚目として「We On 1」がリリースされるとアナウンスされたときは、DJ RashadことRashad Hardenの留まることを知らない成長が、新たな方向性に進もうとしている、ただ単にそう捉えていた。しかし今となっては、突然の、そして悲劇的な彼の死後ほどなくしてリリースされたこの作品は、フットワークのパイオニアによる最初の遺作となるものとして、とてつもない重要性を持っている。Hardenのどの音楽にも言えることだが、「We On 1」にもエキサイティングな空気が漂い、彼が逝ってしまったことを考えると、作品を聞くことさえ痛ましい。収録された4つのトラックには、昨年『Double Cup』で彼がマスターしたスムーズなソウル感よりも、若干、荒めの感覚がある。タイトル・トラック"We On 1"でのギスギスとしたベースラインは特に激しく、ボイス・サンプルが次々と入れ替わっていく展開が「プロメタジン」のフレーズに差し掛かったときには、息が詰まりそうになる。 数ヶ月前、筆者に「毎日が最高だぜ」と語ってくれた(英語サイト)Hardenは、彼の音楽を聞いて悲しくなることなど、もちろん、望んでなどいないだろう。それに、クラシックなTeklifeらしいダンス・トラックには、そうなる理由など微塵もない。DJ Spinnとのコラボレーション"Come On Girl"は、「Pop That Pussy / あいつとヤっちまえ」という言葉で埋め尽くされた卑猥なゲットーテックだ。Mannyが参加しているのは、もはや統合失調症のようなトラック"Do It Again"だ。可憐でソウルフルな女性ボーカルから、荒々しくラップするJuicy Jをサンプリングまで、縦横無尽に駆け回っている。 しかし、心構え次第では、本作で最も心が引き裂かれそうになるのは、"Somethin Bout The Thing U Do"だろう。Gant Manとのコラボレーションによって、Chaka Kahnの1984年のヒット"I Feel For You"を切り刻んでいる。遊び心に満ちたドラム・プログラミングによってサックスのサウンドが神経質に響き渡り、ボーカルが4分間に渡って狂ったように突き進む様は、Rashadの真骨頂と言ったところだろう。Hardenは常にフットワークが持つサウンドとしての暴力性を、推進的で励みになるようなものに変化させてきた。彼のように才能に溢れたアーティストを見送るのに、クラシックな作品を完璧にカットアップしたトラックほど最適なものはないし、何より、彼よりもこうしたカットアップを上手くこなす人はなかなか思い浮かばない。
  • Tracklist
      A1 We On 1 A2 Come On Grrl feat. DJ Spinn B1 Do It Again feat. DJ Spinn & Manny B2 Somethin Bout The Thing U Do feat. Gant Man
RA