Suzanne Kraft - Missum

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  • Suzanne Kraftの「Missum」はアルバムというよりも、今回のようにEPやミニLPというフォーマットの方がしっくりくる。本作は壮大で浮遊感のある作品をまとめたもので、順に聞いていくのもよし、かいつまんで聞くのもよし、もしくはサウンドの流れに身を委ねてもいい。内省的でありながら、しっかりと力強さも持ち合わせた「Missum」に収録されたアンビエントでコスミッシェな7つの作品は、全て曲の長さがタイトルになっている。トラックに名前をつけないという決断は、ミニマルに仕立てることによって内省的な要素を高めるという意味で、非常に重要だ。 まず最初に思い浮かぶアーティストは、Emeraldsだろう。特にぐねぐねとうねる"7:30 (In Pads)"や"8:13"での太く波打つコードと真珠のようにきらめくメロディが、彼らの最近の作品でも特徴的な抑制感をもたらしている。ささやくようにか細いノイズとハイ・ピッチのドローンによって、流れるような美しさにほのかな危機感が加えられる。 "6:36"では、分厚くうねるコードとシンセが放つ光が拮抗しあっているが、"4:46"のような他のトラックには、ここまでの遊び心はない。ビートありのトラックもいくつかあり、その内の1つが"4:46"だ。ビートが入ってくるまでしばらく時間があり、ビートというよりもパルスと言った方が近いが、このトラックには『Rerurnal』をリリースした頃のOneohtrix Point Neverを彷彿とさせる霧が立ち込めているようなシンセやニュー・エイジ色に満ちている。最後に収録された"2:30"や、インタールードである"1:59"は、他の長尺のトラックに比べると、素材が削ぎ落とされ、無駄な要素を感じさせない。「Missum」は画期的な作品とは言えないかもしれない。しかし、生の美しさを捉えた瞬間が収められており、時に、崇高な域にまで達している。
  • Tracklist
      A1 7:30 (In Pads) A2 8:13 A3 1:59 B1 6:26 B2 1:15 B3 4:46 B4 2:30
RA