Ø - Konstellaatio

  • Share
  • フィンランドのエクスペリメンタル界のベテラン、Mika Vainioは昨今、精力的に新作を次々と発表している。昨年の下半期、彼はJoachim NordwallとStephen O'Malleyとの共同アルバムを発表した他、Pan Sonicでの彼の作風を思わせる激しく重たいリズムで鷲掴みにした『Kilo』をソロ作として発表している。そしてVainioのソロとしての最新作となるのが『Konstellaatio』だ。伝説的なØ名義による浮遊感があって痛烈なサウンド・ジャーニーとなっている。 ちゃんとしたフルレンクス・アルバムとしては『Konstellaatio』は、Ø名義として発表した2008年の『Oleva』以降、初となる作品であるが、実がVainioは本作に取り組み始めたのはさらに前、2006年のことである。完成までに5年の歳月を要した2005年のアルバム『Kantamoinen』のアンビエント・スタイルと本作が近いサウンドであることは、この点から説明がつく。この名義における作品で言うならば、琴線に触れる完全にビートレスな4曲(内3曲は昔のトラック)を収録した2011年作『Heijastuva』とも同じ文脈にある。そして今作には、1時間強に及んで展開する9つのトラックを収録され、彼のアプローチはかつてなく抑制され内省的なものになっている。 暖かくリスナーを迎え入れる"Otava"。断続的なリズムと柔らかく星が輝いているような情景が深く椅子に腰掛けるようリスナーを促しており、それに続く、比較的強めの訴求力をもった"Syvyydessä Kimallus"や "Kesäyön Haltijat"ではシリアスな方向へと展開している。およそ10分に及ぶ"Elämän Puu"と"Talvipäivä, Vanha Motelli"は広大に広がる『Konstellaatio』の中核を形成している。この両曲では共に、緊張感を持った静寂によって区切られるほぼビートレスな世界が生み出されている。トラックの終盤ではきらきらと琴線を揺さぶるベルの音色とブザー音といった素材が用いられてはいるのだが、このトラックは本作における最も難解な部分にあたるだろう。一方、本作で最も素晴らしいトラックであり、おそらく最も悲しみに満ちたトラックでもあるだろう"Takaisin"では、ミニマルなドラム・パターンと持続するベース音が、エコーの効いた繊細な10拍子のメロディと共に織り込まれている。このサウンドを聞き続けることによって生まれる効果は悲痛でありながら同時に催眠性を含んでいる。 時折、『Konstellaatio』には若干ながら隙間がありすぎると感じる場面がある。そしてそれ故に、相応の忍耐力を要求している。しかし、Øのファンにとっては、もしくは抽象的で瞑想的な電子音楽に熱心な人にとっては、本作は多くの素晴らしい瞬間を収めた良作となるだろう。
  • Tracklist
      01. Otava 02. Syvyydessä Kimallus 03. Kesäyön Haltijat 04. Neutronin 05. Elämän Puu 06. Talvipäivä, Vanha Motelli 07. Metsän Sydän 08. Syvänteessä Pukinjalkaisen 09. Takaisin
RA