Rainer Veil - New Brutalism

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  • ある意味、Rainer Veilのデビュー作「Struck EP」はModern Loveに完璧にフィットするものだった。Demdike Stareによる『Test Pressings』シリーズや繊細で極上の空間を生み出しているときのAndy Stottのように、遠い昔から聞こえてくるような嘆き声に似たダンス・ミュージックの形態を取っていたのだ。EPはModern Loveから発表されている他の作品の同様、殺伐としているものの、もっとポップな仕上がりになっており、マンチェスターの2人組であるRainer Veilによるボーカルを聞くと、Mount Kimbieに対する2人からのいかめしい回答とも取れる。しかし、その結果は残念なことに、目的がハッキリしていない印象派技法のようになってしまっており、適度ではあるのだが、どこかで聞いたことのあるスタイルとアプローチを組み合わせただけの刺激に欠けるものだった。 あれから1年、Rainer Veilが新たな長編EPと共に帰って来た。「New Brutalism」のプレス・リリースでは本作について以下のように述べている。「明らかにイギリス北部の世界観を持ち、Mark Leckeyによる"Fiorucci Made Me Hardcore"において取り上げられたダンス・ミュージック黎明期まで遡るほどのメランコリーを存分に楽める。」 - 確かにいいアイデアだが、こうしたメランコリーさはダークなポスト・ダブステップを寄せ集めたものと同じだ。本作の大部分はヒス・ノイズを多用したガラージであり、Burialのクローン作品とさほど変わりはない。"Strangers"では柔らかな光を放っているものの、それ以外は退屈してしまうほどモノトーン過ぎる。 ジャングルのリズムによるおぞましいトラックも収録され、EPに異なる印象を加えている。本作におけるベストは"UK Will Not Survive"だろう。トリッキーなシンコペーションから魅力的な展開を捻り出している。Guy Called Geraldの『Black Secret Technology』をガランとしたスイミング・プールで再生したかのようなの弾む質感が"Three Day Jag"からは感じられるが、後半部では歪なブレイクビーツが姿を現し、そうした雰囲気を台無しにしている。突き詰めて言うならば、本作の音楽性は「Struck EP」同様、非常にありきたりなものだ。
  • Tracklist
      01. UK Will Not Survive 02. Negative Space 03. Three Day Jag 04. Strangers 05. Run Out
RA