Ike Yard - EP #3 Remixes

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  • Ike Yardのリミックス・シリーズ第3弾でのDesire Recordの人選は非常に鮮烈かつ力強いイメージを作っている。本当にざっくりとした言い方になるが、Bandshell、Powell、そしてVesselはどれもテクノのプロデューサーであり、彼らの作品では分かりやすいフックを用いるのではなく、崩したリズムと狂気の中に泣き叫んでいるようなシンセが特徴的だ。ニューヨークの3人組ユニットIke Yardが彼らにどれだけ影響を与えてきたのかを推し量るのは難しいが、いまだにカルト的な人気を誇っていることを考えると、このプロジェクトのリミキサーが依頼を受けたとき嬉しく感じたであろうことは想像に難くない。 今回のリミックスはどれもIke Yardのスピリット、もしくはサウンドが今も生きていることを物語っており、過去の現在の間に見つけることの出来る共通点を映し出している。Powellによる"Half A God"のリミックスは僅かの要素、つまり、乾いたキックとタムと粘つくベースライン、そしてチェーンソーのようなシンセのみで成り立っている。オリジナルと比べて、テクノ風に仕上がったリミックスでは噴き出す高周波ノイズや次々と変化していくリズムが全方位に張り付いており、Powellの抑制力をもってしても今にも崩壊してしまいそうなほどだ。"NCR"を手掛けたBandshellも同様に焦げ付いた異様な形を作り上げており、カットアップされたドラム・サウンドは鈍い色をしたBandshell独自の理論に従って再構築されていき、その背後ではヒスノイズが噴き出している。 Vesselがリミックスした"Cherish 8"はボーカルを前面に押し出し、前半ではスチールウールのように荒く細いものへと変化させている。広大な空間の中をフィードバック音に晒されながら孤独なキックがこだますパターンによって、薄っすらとしていながら猛威を振るう驚異の空間を生みだしている。唯一、残念なのはThe KVBのリミックスだ。現代のプロデューサーではない人に80年代の音源をリミックスするのはどうも刺激が感じられない。The KVBは"Cherish 8"をメロディアスなバージョンへと作り変えており、面白い再解釈と思えなくもないが、単に付け足しているだけのように感じてしまう。
  • Tracklist
      A1 Half a God - Powell Remix A2 Cherish 8 - The KVB Remix B1 Cherish 8 - Vessel Remix B2 NCR - Bandshell Remix
RA