Various - Selected: Compiled by Fred P

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  • Fred Peterkinの人気が出始めていたとき、彼にとってミックスCDやコンピレーションは自分自身を可能な限り多くの音楽と向き合わせることの出来る最も安価な手段だった。『Selected: Compiled by Fred P』は彼が手掛けるレーベルBoardsから新シリーズの第一弾となるものであり、アナログ盤でのトラックをミックスではなくコンパイルする形で届けられている。Peterkinのサウンドを好んでレコード掘りをしているDJにとっては、手軽でコスト・パフォーマンスに優れた内容だと言えるだろう。 彼がチョイスしたトラックは、スピリチュアルなディープ・ハウスにおける音楽観の最も良い部分と悪い部分を内包している。"繊細"と"退屈"の間にはおぼろげながらも境界線があり、個人的にはBassik GrooveやDeepJust AQuaBeaTの薄っすらとしたトラックはどうも好きになれない。両曲共にふわふわとしていて、それゆえに地に足がついた感じがしないのだ。その一方で、同様に浮遊感のある領域で制作されたRyo Murakamiによる"Midnight Sun"ははるかに魅力的だ。細く端整なリズムや大きくゆっくりと変異していくアンビエント・パッド、そして脈打つSEサウンドを用いたこのトラックは、Kraftwerk、Pole、Brian Eno、Gasといった文脈を受け継ぐスタイルを持っており、Lapienの"My Obsession"での歯切れのいいボーカル・ハウスやPeterkinのサイド・プロジェクトの1つであるSound Destinationsによるジャジーな"N.Y. (Selected Dub)"とは全く異なるものだ。しかし、こうした多岐に渡る要素からサウンド的にもエモーショナルな性質的にも共通点を見い出すことの出来る能力こそ、Peterkinをここまで興味深い存在にしているものであり、何よりもまずこの点がその理由として挙げられるだろう。一種の禅とでも言えるような至福に満ちた超越性がある。 時として、Peterkinのセレクションは非常に微細なものであるため、空気中に消えていってしまいそうに感じることがあるが『Selected』の残りの部分には魔法のようなクオリティがとじ込められており、もしFred PのDJを聞いたことがなければ、今すぐ聞きに行きたくなることだろう。願わくば夜明け時、極上に薄く織られた繊維のようなサウンドが作る魔法の空間に対してオーディエンスのマインドがオープンになる時に聞くのがいい。
  • Tracklist
      01. DeepJust AQuaBeaT - Interpretation 02. Bassik Grooove - Synthetic Ocean 03. Bobby O'Donnell - The Shards of Our Childhood 04. Ryo Murakami - Midnight Sun 05. Lapien - My Obsession 06. We Are MAM - Roots Underground 07. Orion 70 - Enki 08. Fred P - N.Y. (Selected Dub)
RA