- 多くのレーベルやプロデューサーがこぞってハウスやテクノへと移行したり、レギュラー・パーティーが徐々になくなっているにも関わらず、ダブステップにはクリエイティブなポテンシャルを秘めたサウンドがいまだ数多く眠っており、Malaはそうしたサウンドを発掘し、自身のレーベルDeep Mediから発表している。ダブステップは現在も静かに繁栄を続けているようだ。
Gantzによる今回の12インチがまさにその一例だ。軽快なパーカッションと深みのある重低音が織り成すコントラスト上を駆け巡る"Spry Sinister"はその名に恥じない見事な仕上がりとなっている。不穏なベース音によってスタートするトラックは、3連符のリズムと短く繰り返されるボーカル・サンプルが加わえられる。リムショットからキックまで、徹底して角張った感覚と乾いた質感で統一されており、真っ黒なローエンドに対して素晴らしい対比を作り出している。途中までは静かな診療所にいるかのような感覚に陥るが、鬱蒼としたベースライン以外の要素が全て取り除かれ、徐々にリズムが再構築されていくにつれ、各素材は力強いシンコペーションへと姿を変えていく。"Rising"で焦点が当てられているのはストリングスとボーカルのモチーフだ。おそらく、Gantzの地元であるトルコの音楽からサンプルしたものと思われるが、ベースと機能的なパーカッションによる淀んだ空間に対して魅力的なコントラストとなっている。鮮やかに輝くメロディによって"Spry Sinister"よりも殺伐とした印象が薄くなっているものの、曲そのものには全く影響はない。
TracklistA Spry Sinister
B Rising