Appleblim & Komon - Jupiter

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  • ダブステップから派生していった音楽における最も面白い存在の1人としてAppleblimの名前は常に挙がってきた。多くのプロデューサーが4つ打ちへとシフトしていく中、Apple Pipsの主催者である彼はハウスやテクノといった音楽に対し、付かず離れずの関係を保ってきた。バウンシーな低音とカットアップされたボーカルを用いた"Gas Jam"(英語サイト)のように、従来の音楽的イメージに沿ったトラック、もしくは陰気な空気が充満するテクノ・トラック"NY Fizzzzzz"(英語サイト)などは、より模索的な試みとして捉えることが出来る。もしかすると「Jupiter EP」はこれまで彼がKomonと共同で制作してきた作品と比べると、それほど驚くようなものではないかもしれないが、ジャンル区分が出来ない作品であることは確かだ。 "Jupiter"や"Glimmer"は単純明快なトラックだ。Space Demension Controllerがフロア仕様のトラックを作ったときのように、軋むハイハットとブーギーなベースといった同じ素材を用いてそれぞれのトラックは仕上げられている。こうした類の重心低めなハウスでは瞬間的なインパクトは大きいのだが、トラックとしての寿命という意味では比較的軽いものと言わざるを得ない。Appleblim & Komonが用いる不協和音は非常に特徴的で抜き差しされるリズムの周りをぐるぐると渦巻いている。 "Beach Trek"はよりタフな仕上がりで、かつ興味深いトラックだ。4つ打ちの要素は取り払われ、キックはビートの周りをあちこちへと飛び回っている。岩を水面に投げ入れた時のような波紋をたてながら響き渡るベルリン・サウンド的なコードには、イギリスの空気感が加えられ、スイングしながら渦巻いている。序盤は霧がかかったようにアトモスフェリックなのだが、ブレイク時には視界が晴れていき、新たに加わるしなやかなビートがトラックを引っ張っていく。以降、ボディに直接訴えてくるロウな展開へと発展していくこのトラックはベース・ミュージックのビートとテクノらしい力強さを兼ね備えている。
  • Tracklist
      A Jupiter B1 Glimmer B2 Beach Trek
RA