Perc - The Power And The Glory

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  • 「俺はイギリス経済の低迷やニューカッスルでアートへの投資がゼロになったことについてのニュースを見てからスタジオに入って、その怒りをテクノトラックにぶつけるようなことはしない。」自身の音楽と自身を取り巻いている政治状況とのつながりについて聞かれた際、PercことAli Wellsは昨年このように答えている。この言葉を間違ってはいないのだが、現在、イギリスの政治がクレイジーな状況にあることは少なからず彼の作品に影響を与えているように思う。彼の1つ前のEP「A New Brutality」(英語サイト)のカバーにトレリック・タワーの写真が用いられていることもそうだし、このタイトルもそうだろう。 『The Power And The Glory』に収録されたトラック・リストに目を通したとき、"David & George"を見逃すことは出来ない。そう、イギリスの総理大臣と大蔵大臣だ。底無しに歪みまくったビートの上を狂気に満ちた笑いが漂っている。テープ・ループによって処理されたブリンドン・クラブ(David Cameronが所属していたオックスフォード大学の裕福な男子学生のみによるサークル)の男たちの高笑いだ。一方、本作の印象を決定付けているしっかりとした品質もトラックから感じることが出来、タメとヌケ、静と動による緊張感に満ちている。 最初の2曲はFactory FloorのNik VoidやDethscalatorのDan Chandlerによるボーカルを切り刻んだものだ。両曲ともノイズ・ミュージックへの理解を高めようとしているのだが、上手く機能していない。Chandlerは動物のように闇に向かって雄たけびを上げ、Voidの声はヒトとはかけ離れた雰囲気を持ち、歪んだサウンドの嵐の中へと消え去っていく。トラックはひたすら崩壊していき、錆び付いたマシーンによる荒れ狂うサウンドの中を罠にかかりもがいているかのような声が痛ましく響き渡る。 Percのファースト・アルバム『Wicker & Steel』ではテクノのアルバムでは滅多に味わうことのなかった空気感とビートを見事に組み合わせていたが、今回のアルバムほど過激な内容というわけではなかった。"David & George"でのマッドネスに続き、"Horse Gum"では5分間に渡ってドローンと不吉な金属音による"静"の世界が広がっている。鳥のさえずりと軽快な口笛でスタートする"Dumpster"は突如、激しく歪んだキックによって切り刻まれる。ここにはまとめ上げるという意識は一切なく、サウンドが容赦なくあちこちへ飛び回っている。以降、トラックは一気に加速しアルバム終盤にかけて暴力性がさらに増していく。デトロイトのアーティストX-102もびっくりの荒れ狂うループをブロークン・ビーツと組み合わせている。 『The Power And The Glory』はあからさまに政治的であるわけではない。むしろ、素晴らしいテクノ・ミュージックにように、抽象性や変容していく反復の中にエネルギーを秘めた作品であり、恍惚に溢れるテクノ・サウンドが立ち上がってくるところにその素晴らしさがある。キックドラムや共に用いられているサウンドによって生まれる激震と同時に、質量を共に感じることが出来る。収録された10のトラックを通じてWellsは言葉に出来ない多くの感情を届けており、骨の髄に響いてくる一連の空気について言い表す言葉が見つからない。George Orwellの言葉を借りるならば「絶え間なく増大し、その巧妙さを増して行く」力だ。Wellsはサウンドの中にOrwell的な揺るぎない素晴らしく脅威的なイメージを見い出している。「権力に陶酔し人間の顔を踏みにじっている」イメージをだ。
  • Tracklist
      01. Rotting Sound 02. Speek 03. Lurch 04. Galloper 05. David & George 06. Horse Gum 07. Dumpster 08. Bleeding Colours 09. Take Your Body Off 10. A Living End