Steve Moore - Pangaea Ultima

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  • 数多くのエクスペリメンタル・シンセサイザー・アーティスト同様、Steve Mooreもまたたくさんの音楽を制作している。ZombiやTitanといったバンドでの活動に加えて、彼は昨年だけでも、Daniel O'Sullivanと共にシンセ・ポップ・アルバムをMiracle名義にて制作した他、2枚のフルレンクス・アルバムを本名名義でリリースしている。『Pangaea Ultima』は、ますます卓越性を増しているSpectrum Spooksから発表となる彼のニュー・アルバムであり、これまでのソロ・リリースにおいて最も人々の注目を集めることになるものかもしれない。 Mooreはこうしたことを、これまでにも長い間、続けてきており、『Pangaea Ultima』を通じて、確かな見識によるクオリティの輝きを感じることが出来る。アルバムの幕を開ける波打つような"Endless Caverns"から、最後に収録され、力強く鼓動する"Workdbuilding"まで、これらの楽曲はインプロヴィゼーションというよりも徹底的に練り込まれた作品であるように思う。"Worldbuilding"は、Mooreがいかにして各素材を構築しているのかを窺うことの出来る1曲だ。新しく加わるサウンドが、相互に作用しながら混ざり合っていく中で、互いのサウンドを洗い流すように折り重ねられていく。"Aphelion"や"Pangaea Ultima"は、黙想しているかのように感じる瞬間であり、そこでは、Emeraldsにおける崇高さとTangerine Dreamにおける舞台的な様相、この2つの間に存在するエモーショナルな共鳴域にまでMooreは達している。 "Pangaea Ultima"では本作にとって決定的となる要素をフィーチャーしている。それはつまり、パーカッションのことである。8分間に渡り広大に広がるサウンドスケープの中を、メトロノームがテンポを刻むかのようなパーカッションが大地に根を生やしている。同様のことが"Deep Time"においても聞くことが出来る。この微かに鼓動するパーカッションとは違うサウンドを用いていたなら、ひょっとするとテンポを遅くしたテクノ・トラックのように聞こえるかもしれない。しかし、2012年にMooreが告白したように(英語版)、彼はダンス・ミュージックを気に留めていないのだ。それに、本作において彼がやろうとしていることは、そことは違うものだ。このパーカッションは彼の作り出すサウンドスケープの中における1つの要素でしかない。 単に受け身で音楽を聞くのではなく、1つ1つ細かい部分まで深く食い入るように音楽を聞く人にとっても、『Pangaea Ultima』は等しく同様に価値のある作品だ。本作のタイトルは、未来の超大陸のことであり、本質的に異なるもの同士が理想的な1つの状態になっていくことを示唆している。まさにこの完全性に満ちた感覚こそ、『Pangaea Ultima』に夢中にさせられる点に他ならない。
  • Tracklist
      01. Endless Caverns 02. Planetwalk 03. Deep Time 04. Nemesis 05. Pangaea Ultima 06. Logotone 07. Aphelion 08. Endless Mountains 09. Worldbuilding
RA