Andy Mac - Regular & Irregular

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  • 近年ブリストルから制作されながらも、残念ながら見過ごされているハウスミュージック。パーティーFalling UpのメンバーであるAndy MacとJay Lはこうした音楽を積極的にサポートしてきた。Jay Lは昨年BRSTLからリリースした12インチ「Looking Up Pt. 1 / Try Slung」によって華々しい評価を獲得。そしてMacはその一年前に「Everytime」にてデビューを果たしている。「Everytime」ではリリース元であるPunch Drunkの音楽性に沿ったヘビーなベースラインが用いられてはいるものの、両作品共に夏らしさを感じさせるアナログなグルーヴを追求したものであり、ブリストルの同世代の音楽性というよりもデトロイトハウスからの影響を伺わせている。 今回、Andy Macによる2枚組12インチは前述の作品以来となるものだ。Falling Upの創立メンバーであるTypesunとの共作"The Rude Sea"でのデトロイト風ハウスを除いては、本作は「Everytime」とかなり異なる仕上がりになっている。その代わりに『Regular & Irregular』に収録された5つのトラックには音数を抑え、隙間の多い音色配置によるアレンジが施されており、様々なスタイルを模索しつつもシンプルな構成によって楽しめるものとなっている。総じて本作でのこのアプローチは見事に機能していると言っていい。日差しを目いっぱい浴びているような"Cities & Desire"での強度の中で揺らぐグルーヴはまるで陽炎を見ているかのようだ。その間逆の温度感を持った"Lit"では中盤に差し込まれるパーカッションと重々しい重低音が作り上げる荒涼とした音風景の中を隙間多めのコード進行が鳴り響く。さり気なくエレクトロのナンバー"Nowhere"も収録されている。このトラックはJay LとTypesunが制作に協力しており、数分間に渡ってきらきらと優雅に奏でられるコード進行を聞けば、その要素を感じることが出来るだろう。唯一、テクノの方向性を持ったトラック"Hearts & Lungs"は冗長な印象だ。フランジャーの効いたハイハットが耳障りで聞いているとすぐに疲れてしまう。色々な意見はあると思うが、こうしたトラックはもっと手短に分かりやすくすることも出来たのではないだろうか。しかし同時に、このシンプルでジャムセッションのようなスタイルによる構成は本作における魅力の一端を担っている。
  • Tracklist
      A1 Cities & Desires A2 Heart & Lungs B Nowhere! C Lit D The Rude Sea
RA