Fis - Preparations

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  • ドラム&ベースがここのところ調子良い。大衆の目に触れることなく発展を続けていたこの音楽が、最近になり広域に渡ってその影響を見受けることが出来るようになってきている。Burial『Untrue』がダブステップと位置づけられたようにTri Angle Recordsからは初のリリースとなる本作はドラム&ベースとして位置づけられるだろう。しかしドラム&ベースとしての形式に則ってはいるものの、その関係性は希薄だ。本作「Preparations」はどちらかと言うと最近のDemdike Stareがやっているような歪つなジャングルとざらついたテクスチャーを融合させた音楽に近く、そのラフな体裁と不安感を煽る雰囲気は同レーベルからリリースするThe Haxan Cloakのそれと共通している。 気味の悪い不安定に鳴り響くフルートが中心となり展開する"Magister Nunns"。ドラムがカタカタとリズムを刻むのに合わせ、軋むノイズがトラックの風景を作り上げていく。1つの曲というよりもその断片を聞いているかのような感覚を覚えるが、再発となる"DMT Usher"では趣が異なり、こちらではFisの個性を特徴付けているリズム構成によってトラックが成り立っているが、打ち込み特有の的確なリズムタイミングから少しずらしたグルーヴを披露している。かさかさと音をたてるシンセとウッドブロックによってあたかもダンスフロアで機能するかのように聞こえるが、実際のところはクラブミュージックの要素は僅かしか含まれていない。"Mildew Swoosh"(カビの疾走)はそのタイトルが示す通り、昔の地層から掘り起こしたかのような腐敗して朽ち果てたようなダンスミュージックだ。小刻みに震えるパーカッションとシンセ音が殺人鬼の映画のようなノイズと組み合わされている。"CE Visions"も同様に破滅感に溢れている。おぼろげなストリングが泣き声をあげ、非常にベーシックなリズムが不吉に鳴り響く中、ダーティーなキックによって暗闇の中へと押しやられる。「Preparations」ではFisの音楽性が見事に1つの形にまとめあげられており、決して見逃すことは出来ない。
  • Tracklist
      01. Magister Nunns 02. DMT Usher 03. Mildew Swoosh 04. CE Visions
RA