Emptyset - Recur

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  • 過去6年間に渡り、Emptysetはミニマルテクノのアーティストからパイオニアへと進化してきている。テクノ、ダブステップ、ノイズを基調としたサウンドデザインの領域を開拓するパイオニアとしてだ。Paul PurgasとJames Ginzburgによるこのユニットはこの数年、通常とは異なる音響環境でのサウンドから生まれる衝撃をテーマとして制作に取り組んでおり、コッツウォルズにある高級邸宅での作品『Medium』や放棄された原子力発電所での『Material』はこれにあたる。彼らにとって4枚目のアルバムであり、Raster-Notonからは初のアルバムとなる本作『Recur』は、そうした外部環境よりもサウンドプロセッシングがもたらす制限に意識を傾けている。 タイトル(Recur / 再び起こる、の意)が示している通り、反復が本作の重要な要素だ。根幹となる構造は若干の変化を伴う反復によって作られている。そこへリヴァーブが加えられ、新たな反響を生み出し、響きの異なるノイズによる強烈なサウンドが差し込まれる。"Frangment"では低音ノイズがリズムパターンを形作り、徐々に勢いを増しながら、3分間かけて突き抜けていく。6分間に及ぶ"Order"でも同様のトリックが行われている。ここに収録された多くのトラックではサイドチェインによるコンプレッション(ダッキング)の使用が頻繁に見受けられるが、特に"Instant"がその良い例だ。現行のダンスミュージックでは過度に用いられているテクニックであるにも関わらず、テンポが遅いトラックにおいてでさえ、過大入力を押さえグルーヴを馴染ませる従来の用途ではなく、全く逆の方向性を追求しようとEmptysetはこのテクニックを使用している。 もしかするとタイトルトラックである"Recur"が本作ではもっとも面白い出来かもしれない。テンポは速まり、ホワイトノイズを取り入れた音色がアクセル全開で轟く。重低音がトラックを揺らす空間はアルバムで最も圧倒的かつカタルシスを感じる瞬間だ。最後に待ち受けるのは"Limit"。ここまでアルバムを聞いてきたことで、さらに無慈悲なこのトラックでも既に聞く準備が整っているのではないだろうか。このトラックによって本作に収録された個々のトラックの構造がまとめて映し出される。その構造とはつまり、限界まで構築し、そのピークで停止することだ。 『Recur』はEmptysetの過去のリリースと比べてそれほど異なっているとは言えないが、彼らのスタイルは一点に集中するようになっており、間違いの無い仕上がりとなっている。冒険的なレコーディングの分野における裏話のようなものがなくとも、ここで重要な要素とされるのは空間であり、音響分野においてPurgasとGinzburgの2人はリスナーに自由な価値観を与えることが出来る存在だ。しかしながら、彼らの音楽は予期しなかったものや、中心からこぼれ落ちたものによって作り上げられる音場の解釈を捻じ曲げるために作り上げられたものだ。その音楽はそれでもなお未来的であり、過去の作品を引き合いに出せるような模倣作品とは違い、見たことも聞いたこともない未知なるものだ。それだけで本作は聞くに値する作品となるだろう。
  • Tracklist
      01. Origin 02. Fragment 03. Disperse 04. Order 05. Absence 06. Lens 07. Instant 08. Recur 09. Limit
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