Various - Kill Yourself Dancing: The Story of Sunset Records 1985-89

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  • Trax Recordsのバックカタログをまとめたコンピレーション『Traxbox』とTerry Farleyによりアシッドハウス時代を総括した『Acid Rain』が最近リリースされたことは、ハウス黎明期のクラシックをまとめて手軽に聞きたかった人にとって非常にありがたいことだ。自分自身でこうしたものを誰も作ろうとしていなければの話だが。しかし、ニッチなハウスの好事家であったとしても、Sunset Recordsのコレクションという話になれば、このレーベルのカタログを完璧に網羅している人はおそらく居ないのではないだろうか。これは決してこのレーベルの音楽がレアだからということではなく、Trax RecordsやDJ Internationalなどと比べるとシカゴにおけるハウスミュージックの歴史においてSunset Recordsは見過ごされて来たような印象があるからだ。 『Kill Yourself Dancing: The Story of Sunset Records 1985-89』には克明に記されたライナーノーツが付随されている。このライナーノーツを読むにつれ、より多くの代償をこのコンピレーションに払ってきたかのような感覚を覚える。A&R担当のMatt WarrenやMiguel Garcia、White NightやBen Maysと言ったアーティストまで、レーベルを通じて様々なものを生み出した関係者の誰よりもだ。というのは、ここで語られているずる賢いディストリビューターや音楽業界における詐欺行為は残念なことに聞き覚えのある話題かもしれないからだ。しかし、ここに収められた音楽はそうしたこととは一切関係のないものだ。ハウスミュージックがまだ生まれる前のこと、Sunset Recordsはディスコ、ファンク、サルサといった音楽からスタートしている。ヒップホップが生まれたニューヨークのブロックパーティーでは当たり前のことだった折衷的なバイブスを『Kill Yourself Dancing』では感じることができるし、ハウスという音楽が生まれるアイデアがどういったものであったのか、その感覚を味わうことが出来る。まだこの音楽がクリシェになる以前の話だ。オリジナルの"Face The Music"ではざっくりとしたビートの上をリフがチャイムのように鳴り響き、ボーカルは躍動感に溢れている。その一方でWhite Knightによる"It Could Be Acid"はPhutureの"Acid Trax"同様、教科書にでも載っているかのようなアシッドハウスのお手本とも言えるトラックだ。 収録されたトラック全てが興味深いと言えるわけではないことは認めざるを得ない。というのも完成されているとは言えないような非常に粗野なリズムのトラックもあるからだ。Sunset Recordsの音楽をハウスミュージック史における重要な存在として正しく位置づけるには、1枚のコンピレーションだけではおそらく十分ではないだろう。しかし、ハウスDJとして十分な資質を持っている者のセットには、Kasjaによるバレアリックサウンドのプロトタイプ"Try Try Again"のようなトラックが含まれているし、ハウスミュージックが何故、現在のような姿をしているのかということに強い興味を持っている人の耳には『Kill Yourself Dancing』はとても価値のあるものとなるだろう。
  • Tracklist
      01. Razz - Kill Yourself Dancing 02. Ben Mays - Lover Man (Lover Man) 03. White Knight - It Could Be Acid 04. Boom Boom & Master Plan - Face The Music (Dub Mix) 05. Modern Mechanical Music - Persia 06. Master Plan - Electric Baile (Commercial Mix) 07. Hex Complexx - I Want You (The Transcontinental Mix) 08. Matt Warren - Rock The Nation (Kenny Jason Remix)