Tessela - Nancy's Pantry

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  • Alex CoultonやAlex Smokeのリミックス、そしてあちこちへと散らばるブレイクビーツが唸りを上げる"Hackney Parrot"(Boiler Roomで初めてプレイされてから1年経った今でもダンスフロアを揺るがしているトラック)でのレイブ感覚を味わうと、90年代、スモークが充満するウェアハウスでTesselaとして知られるEd Russellはガンフィンガー(盛り上がったときに手を銃の形にする行為)を突き上げていたんだろうと思うかもしれない。しかし実際のところ、Goldieによる革新的トラック"Terminator"がジャングル黎明期を騒がしていた頃、Russellはまだ齢2歳だった。そして彼より若干早く産まれたこのサウンドを用いてTesselaが制作している過激なトラックはレイブカルチャーに対する集団的憧憬心に穴を開けるものとなっている。 Russellの音楽はレイブミュージックであり、90年代前半の象徴であるジャングルが異様な形へと捻じ曲がっていった数々のシーンから再び取り出したものである。それは別としても「Nancy's Pantry」で使われている要素もどれも新しいわけではない。収録曲は実にジャングルらしさのあるサンプリングブレイク、うねるベースライン、そして歓喜に満ちたピアノを素材に縫い上げられているが、Russellはこういった要素に対し、その歴史やそれらが意味している事柄へのリスペクトをほとんど感じさせないアプローチを取っている。しかも、ヒップホップからハードコアまで全てのジャンルで使用されているLyn Collins"Think"のような使い尽くされたネタを模倣することによってだ。1曲目においてこうした要素は粉々に砕け散り、粗挽きにしたドラムシーケンスへと変化しており、最初は認識可能であるものの、全く見た事も聞いた事も無いような形へと不意に変化する。それは一種の戸惑わせる技術だと言える。 "Horizon"ではレイヴィーなコードが情け容赦ないリズムにも負けないほどの効果を生み出しているが、次第にその力強いエネルギーはゆらゆらと揺れ始め、最終的に完全に崩壊し、"Gateway"では、若干の変化が加えられて再度姿を現す。ここでは、キックドラムよりも下の部分が激しく揺れており、その音が毎回鳴らされるたび、トラック全体が叫喚している。
  • Tracklist
      A Nancy's Pantry B1 Horizon B2 Gateway
RA