Entro Senestre - Entro Senestre

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  • 2010年に1枚目をリリースして3年、タイトル数は早くも40番までリリースプランが立てられているロウなバイブス筆頭レーベルL.I.E.S.。レーベル設立当初からサウンドの根底にあるアシッド感と良い意味でのいなたさ、そこから抽出されて磨き上げられるサウンドに対するセンスと、クリシェ(例えば、ディスコと言えば脱力系のギター)を逆手にとってもてあそぶかのようなやんちゃ心は「好きだからついついやっちゃいました!」と言わんばかりだ。その結果、強調されるこのレーベルが持つサウンドに対する嗜好性は、過去の模倣と言うよりも新たな価値観となって現行のハウスミュージックに自由な景色をもたらし続けている。そして今回も例に漏れず、素敵な1枚が米アーティストEntro Senestreから届けられた。 "Root Canal"は非常にL.I.E.S.らしさが出ているトラック。キケンな空気を醸し出すバックグラウンドパッドに並行して軋みながら捻り出されるように展開し鼓膜と脳に絡み付いてくるざらついたシンセリフは高純度の視聴体験を約束する。コンプレッサーにくぐらせ絶妙に圧縮された力強いキックと前述のシンセパートが意識を引き付ける中、差し込まれるハイハットとシンバルがアクセントとなり、ミニマルな展開ながらも延々と続くような感覚は時間軸を失わせる。深い時間でのプレイに映えそうなエレガントなトラックだ。対照的にストレートに疾走するテクノトラック"Siamese Connection"。リズミカルに鳴らされるシンセがいい塩梅にアシッドに展開する非常に王道的な作りとなっているが、古臭さはそこにはなく、大きなフロアで聞くと気持ち良さそうなドライブ感に素直に従った良作に仕上がった。 前述した嗜好性は事によってはやり過ぎと捉えられてしまう可能性を含んでいるが、フロアで機能しさえすれば、つまりオーディエンスの心を掴むサウンドであれば良しとするフィールドでは、こういった姿勢は没個性に陥ることを回避するという点でむしろ歓迎すべきかもしれない。
  • Tracklist
      A Root Carnal B Siamese Connextion
RA