DARKSIDE - Psychic

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  • いちプロジェクトとして、Darksideは誰も問うことのなかった次の問いに回答している。-- Nicolas JaarがもしEric Claptonと一緒にやったら、どんなサウンドになるのか?JaarとギタリストであるDave Harringtonによる共同プロジェクト、Darksideの音楽はDire StraitsやPink Floydを想起させるブルージーなギターが織り込まれている。正直に言えば、これはちょっとした衝撃だ。その結果、多くの人が『Phychic』に拒絶反応を起こすかもしれないほどにだ。 もしかしたら、それは失敗と言えるかもしれない。多くのバレアリックサウンドやニューディスコの作品でも、脱力したギターワークを聞くことが出来るが、そういったサウンドとは異なり、本作には皮肉っぽさはなく、安易な過去作品に気を留めたりはしてしない。Darksideは本当に真摯なプロジェクトで、最もラフでサイケデリックな瞬間では、JaarによるタイトなエレクトロニカにHarringtonのギターが煙たくミステリアスな要素を加えていることが分かる。 もし『Phychic』がJaarの過去の作品の高みにほとんど到達していないとするなら、それはこのアルバムが持つ、どことなくはっきりとしない音色に拠るところが大きい。Jaarのバックカタログだと、耳に残るフレーズだったり、サウンドにより張り巡らされた鮮烈な仕掛け、ダイナミックな緊張感などで満たされている。彼のトラックはゆったりとした響きを持っていて、深い眠りのなかに染み渡るようなサウンドだが、はっきりと端的なイメージを持って構築されている。比較して、Darksideはもっとゆるく、散漫な印象だ。呪術的なファンクトラック"The Only Shrine I've Seen"や不安感をあおるアンビエンスの"Greek Light"には奇妙かつキュートな要素が含まれていて、くねくねしながら戯れているような感がある。つまりは、それによって軽薄でラフな印象になっているのだ。同様に、"Heart"でも興奮する見所を築くことなく、大まかなリフとソロパートの間を行ったりきたりしているだけだ。 この殺伐とした感じは最後に収録されている"Metatron"に対するコントラストとなっている。"Metatron"は寄る辺の無い宇宙で迷子になったかのような疲弊した挽歌で、怒涛のクライマックスを迎える2つの展開の間で漂っている。この曲はJaarがこれまでリリースしたもののうち、最も感情に訴えてくるものの1つだ。アルバムの幕を開ける12分間に及ぶ組曲"Golden Arrow"での、ダウナーなディスコからクラウトロックな狂騒へと進化していく様は同じく実に素晴らしい。しかし、そうしたハイライト曲以外では『Psychic』はそれほど脳裏に焼きつくものではない。
  • Tracklist
      01. Golden Arrow 02. Sitra 03. Heart 04. Paper Trails 05. The Only Shrine I've Seen 06. Freak, Go Home 07. Greek Light 08. Metatron
RA