Helm - Silencer

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  • 2012年にリリースしたHelm名義によるPANからのLPにおいて、Luke Youngerは一連の実験として既成概念にとらわれないサウンド、作為的に手を加えたり、壊れている楽器、そして今にも崩れてしまいそうな電子音を用いたノイズ、アヴァンギャルド作品を収録した。「Impossible Symmetry」以来のリリースとなる「Silencer」は前作と比べて理想的とまではいかないものの、同等に好奇心を掻き立てる内容だ。曲長が5分のトラックが2曲、その間に挿まれるように10分のトラックが収録されている。 Helmはノイズのような混沌を暗示しているが、それによって拷問のように聞こえるということはなく、トラックそのものは抑制されている感がある。"Silencer"では、機械の摩擦音、鈍い金属音、そしてシンセサイズされた不協音が次々と交わっていき、各音の起点と終点の認識を困難なものにする。船の警笛にような不穏な音の中、孤独にキックが打ち鳴らされる"Mirrored Palms"、そして"Bergamo"では高域のドローンとムーディなタムが漆黒の闇の中に現れる。"The Haze"ではその霧が若干晴れたかのようだ。しかし、明示的ではないが、そこには言葉に出来ない恐怖が感じされ、はためくパーカッションと叩き付けられるサンプル音により引き立てられている。本作のポイントは、これらの音により作り出される世界の中で、トラックが他の領域へと進攻していくのではなく、泡を吹き出し今にもどうにかなってしまいそうところだ。残忍性ではなく緊張感がYoungerの武器であり、彼はこの点において急激にしかし最も効果的に実践を行っている。
  • Tracklist
      A1 Silencer A2 Mirrored Palms B1 Bergamo B2 The Haze
RA