Dettmann - II

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  • 3年前、Terrence FullerはMarcel Derrmannのデビューアルバムに対し冷ややかなレビューを寄せており、他のOstgut TonのLP、Shed『Shedding The Past』やBen Klock『One』といったタイトルが持っているリスナーの心を鷲掴みにするクオリティに対し、Dettmannのアルバムはその点に欠けている、と述べられている。彼の意味するところは理解できる。これらのアルバムは多くのテクノ作品とは異なり、リスナー寄りでメロディと情感をふんだんに取り入れており、良くも悪くもエレクトロニックミュージックにおける全てのLPに実施されるリトマス試験に合格した作品だ。つまりトラックを寄せ集めたというよりも、しっかりと"アルバム"として成り立っており、所謂"ホームリスニング"と呼ばれているところに適したものだった。しかし当のファーストアルバム『Dettmann』はそういったことには一切、気を留めなかった。たとえアルバムというフォーマットにおいて、どんな暗黙の了解、期待される基準があったとしても、このアルバムはDettmannのサウンドを最も純粋に表出したもので、ベルリンのプロデューサーに頻繁に当てはまる言葉ではあるが、一切の妥協が無い作品だ。 この点はDettmannが一貫して実践している方法論であったし、ストイックな空気がアートフォームとしてのテクノの中核を成しており、彼ほど徹底してこのことを実践しているアーティストはほとんど居ない。そして彼のスタイルは真の意味でミニマリストだ。無駄が無い故に力強く大きい。レーベル名として、ファーストアルバムのタイトルとしても彼の名前が用いられ、他の名義を一切名乗らずこれまで活動してきたことを考えてみても、実際の音楽以外の部分でさえ彼のミニマルぶりが現れていると言える(彼のニューアルバムのタイトルがシンプルに『II』となっているのも驚きではない)。Dettmannは習慣的にそういった余計な飾り気には目を向けず、全てのクリエイティビティを音楽に注ぎ、その生々しい最深部にまで研ぎ澄ましていくのだ。 このことを念頭に置くと、『II』は意外性のあるアルバムであるとは言えない。ここで聞くことが出来るのは、注意深く削り取った究極に純度の高いテクノ12曲だ。各曲は理路整然としており、必要最低限の色付けのみで魅力的に仕上げている。"Throb"を例にあげると、この曲には多くても4つの要素の組み合わせで成り立っているようだ。筆者のように未熟な耳にはそう聞こえる。シンプルなキック、メロディめいた波打つサウンド、そして柔らかなヒスノイズと静かなドローンサウンドによる微かな背景音の4つ。一切の無駄が無く、全てが必要不可欠で、1つでも音が欠ければ、トラックが成立しなくなるだろう。 これだけ削ぎ落とした内容であっても、何かが欠けているようには感じない。このことが『II』を成功たらしめている。これほどまでにシンプルなアレンジメントの中でDettmannが非常に多くの個性を発揮している点が素晴らしい。"Lightworks"での奇妙かつ軽やかに跳ねるリズムを例に挙げれば、それだけで1曲丸々、複雑な感覚へと変化させていることが分かる。非常に興味深く、最も記憶に残る瞬間はこのアルバムのドラムを用いていない部分だろう。"Shiver"は本作では最も色濃く現れた捩れた1曲となっている。個人的なベストトラックは"Seduction"で、本作で唯一用いられている人声(Emikaによるもの)が絶えず浮かび上がる準アンビエントな1曲だ。『II』はテクノファンにさえも無視されかねないほどに挑戦的だが、むしろ、これは良い兆候だ。去るものは追わずの姿勢がこのLPを形成しており、端的にDettmannを偉大たらしめているものだからだ。
  • Tracklist
      01. Arise 02. Throb 03. Ductil 04. Shiver 05. Lightworks 06. Soar 07. Outback 08. Seduction feat. Emika 09. Radar 10. Corridor 11. Stranger 12. Aim