son.sine - Upekah

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  • 稀少であることよって音楽がカルト的な地位を得るようになるというのは可笑しいことだと思う。とはいえ「Upekah」はその点には当てはまらない。もともとこのタイトルは短命に終わったレーベルNatureから2000年にリリースされており、10年後に2つのデモ作品をセルフリリースするまで、Leyton Glenによるson.sine名義での唯一の作品だった。最終的にDelsinのもとで再発することになった「Upekah」は10年たった今でも非常に意義のある奇跡的なEPの1つとなっている。 このことは何より、流行とは全く関係がない、ということが第一の理由だ。Smallvilleにおける最高の音楽と同様に、このEPは普遍的かつ微かに古典的な重みがある。ダビーなテクノを根幹として"Upekah"はFarbenのような、ざらついたアンビエンスを携え、分厚く豊かなベースラインと鋭いシンセが中域部分もカバーしている。とても味わいのあるピアノワークが作り出すサウンドスケープを背景に、メロディとしての要素が氷河のように漂い、全体像はテクノというよりもアンビエントミュージックのようにゆっくりと解き放たれている。 海中へと沈んでいくかのようなビートの上を劣化させたコードがじっくりと進行していく"Karuna"ではBasic Channelの影響を窺わせる抑制感と共に水面にサウンドが揺蕩う。"Mudita"での途方も無く巨大で惹き込まれる感覚は、ふっと湧き上がるメロディを伴ったミニマルなリズムと共に見事なコントラストを作り上げ、A面で魅せたパノラマな世界観に立ち返っている。「Upekah」には雄大で唯一無二の何かがある。それは広大な景色の中に居るような感覚を与えるもので、同時に親密な暖みを覚えるものだ。
  • Tracklist
      A son.sine - upekah B1 son.sine - karuna B2 son.sine - mudita
RA