Katie Gately - Katie Gately

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  • これまでに12枚のリリースを通じて、Public Informationはアヴァンギャルドな才能を発掘するレーベルとして高い評価を獲得してきた。レーベルアーティスト欄にはActeurs、Love Cult、そしてIVVVOの名が連なっている。Katie Gatelyによる自身の名を冠したデビュー作は解体の音楽だ。収録曲は喜びに満ちたポップな要素を漂わせながらも、その内部から崩れていく。音の渦の中に次々と放り込まれたかのような、もしくは、凍て付く突風によって引き裂かれているかのように、無数の音色と質感が彼女のトラックの中でひしめき合っている。 ゆったりとした空間を展開する"Ice"。大昔のコンピュータから取り出したかのように軋み、カタカタと音を立てながら、その空間に穴を開ける。"Dead Referee"による広大な世界では、乾いた銃撃音が打ち付けられる中、Gatelyによるシルキーな歌声によって調和がもたらされる。歌声がその輪郭を捉えられないほどに抽象化され、デジタルノイズが厚く覆い尽す中、彼女はノイズの中へと消えていく。"Last Day"ではGatelyの歌声が作業代の上で切り刻まれループ処理を経て言葉とも取れない言葉の塊へと変容する。自分の言葉が微かに認識できるものの、異世界の言語が多様に姿を変えていく様子は神託を授かっているかのようだ。"Stems"はDemdike StareがJulianna Barwickをリミックスしたようなトラックとなっており、イントロではフォークポップを皮肉たっぷりに用いたイントロからスタートするが、その構造は次第に崩れ去っていく。 Holly Herndonと類似点があることは明らかだが、彼女の作品はより精製され抑制が成されている他、テクノからの影響が強い。一方、Gatelyの作品では自身の血肉でもあるインダストリアルミュージックからの影響を至る所で感じることが出来る。両者共にポップな要素に対し、肯定的であると思われる。しかし、Gatelyの曲は時間軸が一方方向ではなく、特異な理論によって楽曲の中を縦横無尽に駆け巡り、サウンドそのものに重点が置かれていることを示唆している。
  • Tracklist
      01. Ice 02. Last Day 03. Stings 04. Dead Referee 05. Left Half 06. Stems
RA