Donato Dozzy - Plays Bee Mask

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  • Bee Maskによる"Vaporware"はもともと、相互作用するパターンを13分間にもわたって美しく編み上げた長編トラックであり、そこにはChris Madakによる繊細なアイデアをもとにじわじわとフォーカスが移り変わっていくような魅力があった。それぞれのパターンがスポットライトを浴びるように現れては遠くへと消失していき、それが繰り返されるたびに巨大なタペストリーが目の前に姿を形作っていくかのようだった。Donato DozzyがこのMadakによる作品をリミックスする機会を与えられ、彼はそのサウンドの豊かさと深みを7つのトラックに分けてリミックスした。そのアイデアに応えるべく、Spectrum SpoolsはそれらをWパックのLPパッケージという体裁でリリースしたのだ。 これらのリミックス・ヴァージョンはMadakのオリジナル・マテリアルに比べても遥かにアンビエント的な志向が強い。Dozzyならではのヒプノティックでループ性の強いテクノもまた前面に押し出され、サウンドは刻まれてオリジナルの文脈から切り離され、ぼやけた音像でありながらもぴったりと接合されたループへと生まれ変わり、それぞれが完璧な調和を成している。それぞれのサウンドはしばらくのあいだ手つかずのままで放置されてゆっくりと回転しており、あたかもリスナーがそのサウンドをさまざまな角度から眺めることができるように仕向けているかのようだ。大胆な展開のようなものも無く、ただ時折唐突なムーブメントがアトモスフィアを分断していく。それぞれのサウンドは沈黙の彼方へと消え去っていく前にそこへ定着し、そのフロウは一見硬質ではあるが、水面下では持続的な変化が感じられる。 どのヴァージョンもオリジナルの13分ほどの長さはないものの、これら7つのヴァージョンを並べて連続で聴くという行為は非常にストレンジなリスニング体験を提供する。構成要素であるエレメントがやがてゆがんだエコーに溶けていき、10分前/30分前/あるいはオリジナルがリリースされたときのサウンドの記憶が歪んでいく。Dozzyは時間の感覚というものに対して揺るぎない感性を持ち合わせている。どのトラックをどれだけの時間軸で展開させるか、新しいループをどこで導入するか、フレッシュなリズムをどこで落とし込むかといった事柄について彼は正確に熟知している。この繊細さは、Madakのテクスチャーとメロディに対する感覚と完璧なまでの相性の良さをみせる。これらの結果として、ひとつのサウンドはほとんど無数のかたちへと変貌させることができるという事実を詳細に見せつけている。こうしたプロジェクトは、往々にして芒洋としたものになりがちでもあるのだが、この『Plays Bee Mask』に関わった職人たちはそのクオリティの高さをあますところ無く見せつけている。
  • Tracklist
      01. Vaporware 01 01. Vaporware 02 02. Vaporware 03 02. Vaporware 04 03. Vaporware 05 03. Vaporware 06 04. Vaporware 07