Jeremiah Jae - Bad Jokes

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  • ジャンルが地域性に依って支配されるなか、Jeremiah JaeはUSのあらゆる地域の音楽性を横断する。LAシーンのビーツを援用しつつ、そこにシカゴ的なダーティさや東海岸的なウィットを盛り込み、そこへストーナー的な仕上げをかけてすべてをスムーズなかたちで送り出す。この手法によって彼はエレクトロニック・ミュージック・ヘッズのみならずラップ・ファンからも愛され、長らくセルフ・リリースの形態での作品発表を経て、つい先ごろWarpとの契約を果たした。この『Bad Jokes』にはまたしても彼らしい自由な音楽性が溢れているが、これまでと違うのはこの作品が彼にとってのさらなる飛躍の契機となるだろうという予感だ。 トータルで30分にも満たないこの作品はしかし、Jaeらしいあちこちにちらばる興味対象を俯瞰するには完璧なレングスだ。たとえば、"Seventy 8"ではクールなジャズ感覚をこともなげに披露し、中盤ではさらりとしたギターの展開へとぶっきらぼうなほどに移行し、やがてスポークン・ワードのサンプルがはじける。その複雑なビーツはゲスト・プロデューサーのJonwayneによるもので、さらに"Oatmeal Face"ではFlying Lotusが毛羽立ったサイケデリアを提供している。そのいっぽうで、Jae自身によるビーツも決して過小評価できないものだ。"King Raid"でのバッドトリップ的アトモスフィアはヒップホップ的な典型からの歓迎すべき逸脱を提供しているし、タイトルトラックでは当たり障りの無いピアノ・サンプルをクラウド・ノイズやその他の風変わりな展開の起伏とぶつかり合わせることでそのリリックの隙間に色彩を与えている。 LAの同胞たちと同じく、Jaeの大きなインスピレーションの源となっているのは伝説的なビーツの達人Madlibであり、またMadlibのパートナーにして共犯者のMF DOOMだろう。"Bad Jokes"、"Court Jester"といったトラックでJaeはMF DOOMさながらの揺れまくった言葉あそびを詰め込んだラップを披露している。彼は言葉そのものの響きと母音を伸ばした発声を好んで使い、ひとたびひとつのサブジェクトに集中すると膨大なボキャブラリーをもって攻撃を仕掛ける。"Pervert"は厭らしくもファニーなトラックで、Jaeの正当な理由に基づく不満をすべての子音に載せた逸脱の物語でもある。いっぽう、"Guns N Butter"は教育や貧困、不品行を通して透かし見る屈折した社会史論のようだ。これが他のアーティストであれば偉大な功績としてみられるようなトラックだが、濃密でありながらさらりとやってのけたフリースタイルのような気軽さもある。
  • Tracklist
      01. Evil Laugh 02. King Raid 03. Seventy 8 (produced by Jonwayne) 04. Oatmeal Face (produced by Flying Lotus) 05. Soul Yoga (Indian Man) feat. Isreal (produced by Oliver the 2nd) 06. Pervert 07. Bad Jokes 08. Guns N Butter feat. Oliver the 2nd 09. Court Jester
RA