RocketNumberNine - MeYouWeYou

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  • Mickey MoonlightからMotor City Drum Ensemble、Mike HuckabyからA Guy Called Geraldにいたるまで、Sun Raのスペーシー・ジャズにルーツを持つエレクトロニック・ミュージックにおけるヴォーカル性を重視するアーティストはこれまで少数派であり続けてきた。Sun Raが逝去(もしくは、彼のハードコアなファンに言わせれば「土星への帰還」と言うだろうが)して20年経った今も、そのトリビュートは続いている。昨年、Zombie ZombieはSun Raのアフロ・フューチャリズムを起点に霞んだアナログ・エレクトロニクスを用いいた楽しいオマージュ作を発表した。そして今年、ロンドンの兄弟TomとBen PageによるプロジェクトRocketNumberNine(この名前自体もSun Raの曲名にちなんだものだ)もまたトリビュート作を発表し、Sun Ra Arkestraの系譜を追っている。 彼らはライブ録音でそのワイルドなジャズ・ドラムとファットなアナログ・キーボードを中心にセットアップを展開している。表面的にはシリアスに見えるが、決して学者の慰みものにはなっていない。彼らのデビューを手助けしたのはKieran Hebdenだが、"Black And Blue"や"Deadly Buzz"でのぐいぐいと前に進むグルーヴを聴くにつけ、この『MeYouWeYou』はFour TetというよりはFridgeに近いのではないか。畳み掛けるようなドラマ性、饒舌なクレッシェンド、疎らなドラミングとそのダイナミクスはMogwaiやGodspeed You! Black Emperorなどのポストロックを思い起こさせる。 しかし、彼においてより明確なのは、ライトではっきりとしたクラブミュージックの基盤だ。彼らは(他の文脈で用いれば単に安っぽいものになりかねないような)90年代のレイブ・モチーフを好んで引用する。Brandt Brauer Frickの初期作品にあった軽さを思い起こさせる"Lone Raver"はシンプルなリフを中心に展開し、それをつまんだり捻ったり転がしたり引き延ばしたりといった変化を加えながら、新たなヒプノティック性を持った密度に持ち込もうとしている。"Rotunda"ではFela Kutiのリズムとジャングリスト的なベースラインを好ましく茶目っ気たっぷりに融合し、"Steel Drummer"ではパンク的なエナジーやアフロ・ジャズ・パーカッション、そしてUKらしい悪辣なエレクトロニクスを蒸留し、これまではZEやDFAぐらいでしか聴くことの出来なかったタイプのフュージョンの形を提示している。 "Matthew And Toby"はよりスムーズで、モード的な自意識が高いダンストラックに仕上がっており、アルバムの中ではややおとなしすぎる感もある。だが、RocketNumberNineを初めて聴いてみようというリスナーには、このアルバムはおそらくお勧めできない。たしかに完璧なまでに優れたデビュー・アルバムだが、このアルバムは彼らの素晴らしいライブには敵わない。RocketNumberNineはすでにRadioheadなどもサポートしているし、彼らのライブは4/4ダンスミュージックが居並ぶ今年の夏のフェスのラインアップの中に放り込まれたとしても、その蟲惑的でシャーマニックなノイズは貪欲なクラウドを密集して発狂したモッシュピットへと繁忙させるだろう。もし彼らのライブをSun Raが聴いたら、どんな反応をするかというのは気になるところだ。
  • Tracklist
      01. Lope 02. Rotunda 03. Slide 04. Steel Drummer 05. Symposium 06. Deadly Buzz 07. Black and Blue 08. Lone Raver 09. Matthew and Toby