Zeitgeber - Zeitgeber

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  • Stroboscopic Artefactsというレーベルは、そのアーティストが普段作らないタイプの作品をあえて作らせる傾向がある。MONADシリーズやStellateアンビエント・ボックス・セットなどから判断するに、レーベルボスであるLucyは質の高いコンセプトを好んでいるようだ。彼がヴェテラン・テクノ・プロデューサーSpeedy Jと組んだ新プロジェクトZeitgeberはまさしくそうしたコンセプト性の極致であると言える。Zeitgeberという言葉は、ざっくりと訳すとすれば「シンクロ装置」といった意味合いだが、そのセルフタイトル・アルバムにはこの2人のプロデューサーによる「ダンスフロアーでの機能性から解放された」側面を浮き上がらせ、それぞれのキャリアにおいて最もチャレンジングな音楽性が築き上げられている。 ダンスフロアーに向けられたものではないとはいえ、Zeitgeberは依然としてテクノのツールとテクスチャーを援用している。時折、この2人はその接続パーツを外し、ばらばら且つ不揃いなまま並べているような印象も受ける("These Rhythms")。一方では、テクノを顕微鏡で拡大し、それぞれのパーツの働きを恐ろしいほどの精巧さで見せつけ、その細かな粒子がコンスタントかつ微少な運動性を示している。アルバム冒頭のトラックは短く探索的な内容が続き、膨大に注ぎ込まれたベース("Closely Related")や病的な呼吸("Skin")を経て、アルバムはやがて統一されたビーツへと収束されていく。ときおりAlva Notoを思わせる不穏なメロディが出入りを繰り返すが、それは掴もうとすればするりと逃げていくような感覚で、プロセシングの過程でにわかに現れるかすかな音楽性をにじませている。 "None Of Their Defects"といった比較的長尺なトラックはもしかするとクラブでも機能するかもしれないが、それでもビーツ自体は誘惑的と言うにはあまりに厳格で、ダンスするというよりも壮大な建築物を遠くから眺めているような感覚にさせる。"Now Imagine"はアルバム中でも最も大きな矛盾性を内包しており、なおかつアルバム中で最も吸引力の高いトラックだ。軋みをたてるグラニュラー・リズムは飛行機が金属のメッシュに衝突するかのようなサウンドによって分断され、それが繰り返されるたびにそのエフェクトは衝撃度を増す。たとえ、ダンス・ミュージックでないにせよ、『Zeitgeber』はダイナミック且つフィジカルであり、テクノとアヴァンギャルドを誰よりもシームレスに融合しようとするこのレーベルならではの脳にとってのボディ・ミュージックという特質を如実に体現していると言えるだろう。
  • Tracklist
      A1 Closely Related A2 These Rhythms A3 Skin B1 None Of Their Defects B2 From Here C Now Imagine D1 Before They Wake D2 Display 24