Mike Parker - Lustrations

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  • これまでMike Parkerが唯一残したアルバムは12年前にリリースされた『Dispatches』ただひとつだけだったが、このアルバム『Lustrations』はそれ以来となる新作として届けられた。過去5年ほどのあいだに彼の国際的な知名度は急上昇したが、このアルバムでのParkerは普段のEP群よりもどこかスケールの大きく心地の良いものを作り上げている。しかしながら、この『Lustrations』はアルバム全体としてよりも、DJユースを主体とした妥協なきトラックのコレクションとして記憶されていくだろう。 前作とは12年もの開きがあるとはいえ、両作品に共通しているのはハードウェアを偏愛するテクノ・アーティスト然としたスタイルだ。初期の作品には明確なリズミックさがあり、たたみかけ乱高下するパターンはしばしばテンプレート的なリズムパターンに抗うようなところがあったが、最近の彼の作品ではそうした挑戦的なアプローチが徐々に削ぎ落とされてきた。そして、この『Lustrations』では完全に消失している。 そのかわりにこの作品で強調されているのはノイズ混じりの渦流や非現実的なほどの遠鳴、そして繊細なサイケデリック性といったParker自身のサウンドの個性であり、『Lustrations』ではそれらがおそろしい程の精巧さで織り込まれている。個人的には、 "Lustration 4 (DaiKaiju)"や"Lustration 7 (Forms)"でのハードエッジでシンコペーションの効いたパーカッション、もしくは"Lustration 3 (Atlantic)"や"Lustration 6 (Megalith)"でのスローな6ビートで螺旋を描くトラック群がとりわけ出色だと思う。 しかし、70分以上にもおよぶこのアルバムは一度聴いただけでは全体像を掴ませないだろう。多くのリスナーはよりダイナミックで多様性のある展開を望んでいるだろうが、例えば"Lustration 9 (Drums)"での怒り狂ったようなパーカッションとキラー・ベースラインはとりわけDJにはこれ以上ない程の魅力を有しているとはいえ、単体で聴いているとどうしても平坦な印象は拭えない。熱心なリスナーであれば、こうしたトラック群の代わりにParkerのスリリングなサウンドがリズムによる束縛から解き放たれるアンビエント作品が2つか3つほど収録されていたらいいのにと思うはずだ。 こうした完全なフロア仕様に仕立て上げられたこのアルバムをPrologueはいみじくも「テクノの殿堂」と表現しており、これらのトラックはじっくりとミックスしてみたときにはじめてその大きな底力を発揮する。しかし、このアルバムを聴き終える頃になると私は少し物足りない気持ちになったことも確かだ。ともあれ、次のParkerのアルバムは再び12年も待たされることにならないように望むばかりだ。
  • Tracklist
      01. Lustration One (Khonsu) 02. Lustration Two (Nor'easter) 03. Lustration Tree (Atlantic) 04. Lustration Four (DaiKaiju) 05. Lustration Five (?) 06. Lustration Six (Megalith) 07. Lustration Seven (Forms) 08. Lustration Eight (Contours) 09. Lustration Nine (Drums) 10. Lustration Ten (Pressure Zone) 11. Lustration Eleven (Sarychev) 12. Lustration Twelve (Dericho)
RA