- Dan Ghenacia、Dyed Soundorom、Shonkyの3者によるApolloniaは2012年初頭に生まれたプロジェクトだ。彼らが立ち上げた同名レーベルはすでに6枚近いシングルをリリースし、3者によるDJギグもこれまで数多くこなしている。ざっくりと言えば、彼らのDJスタイルは基本的に3人がそれぞれ1枚のレコードを交代でかけていくバック・トゥ・バック・トゥ・バックというものだ。このスタイルは1人のDJだけでは作り出せない相乗効果が生まれるだけでなく、調和とフロウという点では大きなチャレンジとなる。この『fabric 70』においては、その特徴がとりわけ深刻な問題を引き起こしているわけではないが、ある種のウィークポイントにもなっている。とはいえ、その選曲の素晴らしさには文句の付けようが無く、結果としてそのピークは必要以上にちりばめられている。
ミックスはEl Prevost "Allez Ally"のムーディでシャッフルの効いたドラムではじまり、そのバウンシーなアトモスフィアはTrus'me "Nards"のRyan Elliottによるどろどろしたリミックスへ移行していく。その次にミックスされるApollonia自身のデビュー・シングルのAサイド・トラック"Trinidad"はこのミックスにおける最初の際立った瞬間だ。そこからさらにDaze Maxim "Farbfilm"のDyed Soundoromによるリワークへと流れ、そのメロディは過去数ヶ月のあいだアフターアワーズのクラバーたちにおなじみのものとなっている。NailやThe Moleのトラックで一旦ムードを落ち着かせてから、絶好のタイミングでさらにミックスは展開していく。注目のルーマニアン、Funk Eによる"Masa de Fatza"は6分間をたっぷりと使ってプレイされるが、またしてもミックスのヴァイブはそれまでのメロウさを伴った基調へと戻されていく。
Mood II Swingの強烈なスイングを伴ったハウスがまたもじっくりとプレイされ、ミックスに再び活力が戻ってくる。このムードはDewalta & Frieder Klarisによるエレガントな"Fromsidetoside"(このミックス中で最もミニマルな展開を見せるトラックでもある)にも引き継がれ、次のMaziによる"Scene Shifter"の跳ねたグルーヴを巧みに活かしてもいる。最後の10分間ではPhilip BostonやMasomenos, Ark & Cabanneのトラックでじっくりと整えながら、Grimes Adhesif "Fearless Fun"(すでに彼らのギグでもヘヴィープレイされている)からCallisto "Need Ur Love"(Stalactite Mix)でミックスは締めくくられる。
ここまで書いてきても、やはりこのミックスの大半は単純なアップ&ダウンを行き来しているだけという印象が拭い去れない。それは、普段の3時間セットで作り上げられるピークの回数をほとんどそのままミックスCDのフォーマットに落とし込もうとしているところに起因しているのではないだろうか。いくら選曲のクオリティが優れていても、そうしたアプローチではやはり方向性を見失ってしまっても仕方ない。
Tracklist 01. El Prevost feat. D.Ham - Allez Ally
02. Trus'me - Nards (Ryan Elliott Remix)
03. Apollonia - Trinidad
04. The Mole - Bleep Blop Robot
05. Nail - I've Been There
06. Daze Maxim - Farbfilm (Dyed Soundorom Remix)
07. Funk E - Masa de Fatza
08. Eduardo De La Calle - The Guy From Hackney
09. Mood II Swing feat. John Ciafone - Ohh
10. DeWalta & Frieder Klaris - Fromsidetoside
11. Mazi - Scene Shifter
12. Mome - Control (Tevo Howard Remix)
13. Apollonia - Visa Americain
14. Philipp Boston - Night Chime
15. Masomenos / Ark / Cabanne - Bronze Septembre
16. Grimes Adhesif - Fearless Fun
17. Callisto - Need Ur Love (Stalactite Mix)