Coldfish - The Orphans

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  • All InnよりColdfish名義において2枚のEP「Revelations EP」「The Invisibles EP」で所謂4つ打ちだけのリズムではなく、捻りの効いたグルーヴを提示してきたLaurine Frost。NervmusicやThemeからの本名名義によるリリースと比較しても、そのリズム構成において、より広範で多様な要素を含んでいることが分かる。All Innにとって20作目にして初めての、そしてLaurineのキャリアにおいても初となる本アルバム『The Orphans』では同レーベルからの過去2作品までの路線に加えて、ボイスやフレーズサンプリングを大胆に取り入れ、更にグルーヴの枠組みを飛び越えようとする意欲作となっている。All Innの過去作品を通して聞いてみると、本作がその平均値から逸脱していることが分かる。このような作品をレーベルの節目として提示する姿勢に「All Inn : 全ての素晴らしい音楽を1つのレーベルで」というレーベルポリシーが表れているのではないだろうか。 1拍と3拍にキックを配置しタメの聞いたリズムに、土着的なボイスサンプルと小節の変わり目に挿入されるドラムフレーズを活用したトラック"Apollonia"で幕を開け、ボイスサンプルによるループにショートディレイやリバーヴでアレンジを施したトライバルな"Noatak"へとつながっていく。両トラック共に展開はミニマルながらもグルーヴが失速することなく意識を深く引きずり込む。その一方で、裏打ちのハイハットによりドライブ感を増幅させた"The Sailor"が異色の出来となっており、特にリードシンセを兼ねているベースラインの使い方が特徴的でサウンドシステムでの鳴りが期待できる。そして"Cokku"、"The Waxman"、"The Ambassador"では4つ打ちのトラックを披露。坦々としながらも、くっきりとした音像と音の抜き差しにより生まれる1つ1つの展開が最大限に響く、こうしたサウンドに対する解釈をもったミニマルなグルーヴはAll Innならでは。フレーズのループポイントのずれから生まれる奇妙なグルーヴが心地よい"Arvie Awakens"。ここでもボイスサンプルとエフェクトの使い方が秀逸だ。そして続く"Aino Lane"の幽玄な空間を経て、"Salute For The Unicorns"の優麗な終息へと向かっていくのだが、Coldfish名義での作品にふさわしく、いわゆるダンストラックとして以外の視点を持った楽曲が収録されている。 決まったフォーマットを持っていないからこそ多様なグルーヴをカバーする潜在性を内包した『The Orphans』は、セットに変化を加えたり、ジャンルを跨いだ展開を作っていくサウンドを探しているDJにとっては非常に機能的な1枚になるだろう。本作の構成は単なるシングル集としてではなく、Laurineが持つ音楽性の幅を感じることの出来る仕様となっている。今後のリリースで、Coldfishがどのように深化していくのか期待したくなる刺激的なアルバムだ。
  • Tracklist
      A1 Apollonia A2 Noatak B1 The Sailor B2 Cokhu C1 The Waxman C2 The Ambassador D1 Arvie Awakens D2 Aino Lane D3 Salute For The Unicorns