Anthony Naples - El Portal

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  • Trilogy Tapesを運営するロンドンのアーティスト、Will Bankheadの視線はここ最近ニューヨークへと向けられているようだ。昨年Trilogy Tapesからリリースされた最重要作のひとつはブルックリン在住のプロデューサーWillie Burnsによるものであり、彼の作品はL.I.E.S.や彼のセルフ・レーベルWT Recordsからリリースされてもいる。Willie Burnsのリリースに次いでTrilogy Tapesから届けられたのは、またしてもニューヨークのアーティストによる作品だ。Anthony Naplesは、Mister Saturday Nightが2012年に放ったヒット"Mad Disrespect"を手掛けていた若き新鋭だ。 Naplesのサウンドの変遷は興味深いものだ。彼がMister Saturday Nightとしてリリースした2枚の12インチは、ハウスのスタンダードなフォーマットを実直になぞったものであったのだが、この「El Portal」はそこから少しだけ冒険を試みている。タイトルトラックと"Busy Signal"の2曲は、まるで高熱でうかされている最中に聴くディープハウスのようだ。2曲ともにざらついたコードが敷かれており、"El Potal"の終盤ではまるでThe Caretakerあたりのバンドが突如ゲストに現れたのかと思わせるほど、エコーにまみれたロック・バラードが遠くで鳴っているかのようだ。"La Cuarta"はただ美しいアルペジオが鳴っているだけかと思いきや、最後にはかすかなキックドラムが絡んでくる。個人的にEP中ベストと感じたのは"Pueblo"で、物悲しいオルガンの音色に導かれて怠惰な冬の情景が描かれている。もはや説明の余地もないが、やはりNaplesは只のハウス・レコードの作り手には収まらない何かを持っていることをこのEPは証明している。
  • Tracklist
      A1 El Portal A2 Pueblo B1 Busy Signal B2 La Cuarta
RA