Archie Pelago - Subway Gothic / Ladymarkers

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  • ジャズとダンスのハイブリッドは現在でもよく見受けられる慣例ではあるが、その多くはダンスフロアーにのみフォーカスしたものでしかないのも確かだ。その点、ニューヨークのArchie PelagoとPortico QuartetのサイドプロジェクトであるCircle Trapsはしばし比較対象として引き合いに出されることも多いのだが、後者がECM的なジャズとダークなポスト・ダブステップを融合しようとしているのに対し、Archie Pelagoはそれよりも少しだけより豊かな影響源をもとにしており、彼らのプロダクションにはよりダンサブルで想像力を刺激するようなタッチに溢れている。このトリオがブライトンのWell Rounded Individualsからリリースした2枚目の12インチはこれまでのストレートなハウスグルーヴのフォーマットをより強固なものにしているように見受けられ、その効果的な基礎から出発しながらさらにジャンルの境界線を越えるハーモニーとストラクチャーにおける実験精神が増加している。 "Subway Gothic"は木管とチェロが塗り込まれたドリーミーなオープニングから、しばし勢いのあるハウスビートが顔を覗かせはじめる。そのタイトに編まれたメロディはノルウェイのバンド、Jaga Jazzistを彷彿とさせる。しかし、"Brown Oxford"ですぐに我々リスナーはつるつるとして不安定なブレイクに引き込まれる。チェロの音色の断片が神経質に滑り落ちていき、それらが収束しひとつのループとなりビートが戻ってくると鋭いピークへと持っていかれる。こうした予想を裏切るかのようなエレクトロニクスの使い方はリスキーなものなのだが、ここでは見事に危なげなくまとめられている。"Ladymarkers"はよりゆったりとしており、デリケートなシャッフルを背景にフェンダー・ローズとフルートのレイヤーが煙のように燻っている。中盤では線の細いコード進行が取り入れられ、全体的にフュージョン的なヴァイブを帯びてくる。フュージョン的と聞いてにわかに拒否反応を示すリスナーもいるかもしれないが、そこは彼らの手腕でうまくやってのけている。
  • Tracklist
      A Subway Gothic B Ladymarkers
RA