Various Artists - Think and Change

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  • Boddika率いるレーベル、Nonplus+はそのスタート時はアトモスフェリックなドラムンベースを再定義しようとしていたが、いまではUKで最も信頼できるダークでムーディなテクノの供給元となった。あらためて彼らの最初のリリースまで辿ってみると、その方向性にはひとつの一貫性が見出せることがわかってくる。言葉ではなかなか言い表せないものではあるのだが、それが存在することだけは確かだ。Nonplus+からリリースされる音楽には明らかな機械っぽさがあり、そのオートメーション化されたパーツ群は却って他のレーベルの作品よりも感動的に響くのだ。レーベルとして初となるこのコンピレーションにおいて流麗且つスタイリッシュなクラブトラック群と共に刻まれているのは、BoddikaのA&Rとしての鋭い審美眼だ。 この『Think and Change』にはKassem Mosse、Lowtec、Boddikaといったレーベルなじみのメンツに加え、Pearson Sound、Four TetそしてMartynといった(レーベルにとっての)ニューカマーも参加している。それぞれがその持てる実力を余すところ無く発揮しており、あらゆるメロディの断片がまるで発光ネオンのように輝いている。Kassem Mosseによる、素晴らしく冷ややかなタッチの"IP Mirrors"は過去の彼の作品中でも屈指の出来映えだ。Endian "Straight Intention"はヘラクレスのような力強さをたたえたジャッキン・ハウスで、Four Tetは短くも濃密な"For These Times"において、いつになくストレートなグルーヴを聴かせてくれており、クラシックなハウス調のオルガンを冷凍したかのようなサウンドが重要なエレメントとなっている。 このコンピはそこからさらにダークさを増していく。Pearson Soundの狡猾さがにじむ"Quivver"では彼らしいスカスカの構造の中に暴力的なまでのサブ・ベースと身もよだつようなヴォーカル・サンプルが埋め込まれている。BoddikaとJoy Orbisonによるコラボレーション最新作"&Fate"はこれまでの彼らのどの作品にも増して過激で熱っぽいものだ。Joy Orbisonによる"Big Room Tech House DJ Tool - TIP!"は爆発寸前の水素爆弾の内部にいるかのようなアンセムで、そのトラックタイトルからはハウス・ミュージックのお決まりごとに対するNonplus+の姿勢を如実に示している。つまり、目的をはっきりさせておきながらそのお決まりごとをズタズタに切り裂く、といった趣だ。そこに刻まれたヴォーカル・サンプルは他の誰でもないJoy Orbisonならではのものだが、注意深く聴いてみるとそれはまるで真空空間のなかで怒鳴っているかのようにも聴こえてくる。 Boddikaはただ未来だけにしか興味がないのかと思わせつつ、そのルーツも決して忘れていない。コンピの終盤に用意されているのは、Autonomicのオリジナル・メンバーである3人、つまりInstra:mental & dBridgeによる"White Snares"だ。ミステリアスなトラックが並ぶこのコンピの中にあっては、あまりにもスタンダードな緊張感を帯びたドラムンベースのようにも聴こえてしまうが、そこには固有の力強さがあるのも確かだ。このトラックは、Nonplus+というレーベルが立ち上げ当初まったく異世界からやってきて、それ以来獲得してきた高み、そしてそこへ辿り着くまでの果てしない道のりを改めて実感させてくれる。
  • Tracklist
      A Boddika & Joy Orbison - &Fate B Lowtec - The Rhythm C Four Tet - For These Times D Boddika - Beats Me E Pearson Sound - Quiver F Endian - Straight Intention G Joy Orbison - Big Room Tech House Dj Tool - TIP! H Kassem Mosse - IP Mirrors I Instra:mental & dBridge - White Snares J Martyn - Bad Chicago