Derrick May and Jimmy Edgar - We Love... Detroit

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  • 価値のあるものに対しては、しかるべき対価を支払うべきだ。マーケットに胡散臭いコンセプトのもと作られたミックスやコンピレーションが溢れかえるなか、『We Love... Detroit』の背後にあるアイデアには一分の隙もない。デトロイトの2つの世代を代表するネイティブ、Derrick MayとJimmy Edgarによって選曲されたこの2枚のアンミックスCDにはデトロイトのサウンドがどのようにして発展し、そして増殖し続けているかが示されている。もちろん、こうした見方はこの作品全体に比べればごく部分的なものにすぎない。少なくとも、この『We Love... Detroit』が確たる説得力と愛のもとに作られたことは確かだ。 2枚のCDで構成されている以上、どちらがより優れているかという議論は不可避なものであるが、Mayが手掛けたCD1は素晴らしい。彼のチョイスはデトロイト以外のトラックが多く含まれているものの、飾り気のないエレガントさを持ったドラマティックなマシーン・ミュージックとしての古典的なデトロイト・テクノのサウンドを見事に体現している。さらに重要なのは、彼のセレクションがデトロイト・テクノの中心にある二面性を表現しているという点だ。つまり、ダンスミュージックであると同時に、メランコリーと個人的な内省の発露としてのデトロイト・テクノの特徴だ。アフリカ的要素(Yotam Avni "Pentimento")やジャズ・ファンク的要素(チープでスムーズなサクソフォンが配された"Power Thru Pt 3")を織り交ぜた事でその饒舌さはさらに増している。そのセレクションを通して、Mayはデトロイトにおける多様な文脈性を表現して見せているのだ。 CD1のハイライトといえば、Petar Dundovによる壮大でクラシカルなシンセサイザー叙事詩 "Distant Shores"とKiNK "Hand Made"だろう。Grazziniによるスイートで精緻なデリケートさを持った "Nova" もまた、ヨーロッパ産の初期エレクトロの影響を受けたデトロイト・テクノの初期の姿として貴重なトラックだ。70年代ソウルからのストリングス・サンプルを用いたAndresの"New For U"ではDaisy Age的なフィーリングを爪弾くようなエレクトロ・ポップ調のリズムに落とし込み、デトロイト・テクノとUSヒップホップ、ヨーロッパのインディー・ダンスを繋ぎ合わせているかのようだ。デトロイト・サウンドは決して隔絶されて生まれたものではないのだ。 都市の表情は一面的なものとは限らないことを証明するかのように、セックス・ファンクを唱えるJimmy Edgarはほぼすべてをデトロイト産のサウンドでまとめつつ、一般的に想像されるような「デトロイト・サウンド」からは一線を画している。彼のセレクションの冒頭は、やけにせわしなく、細かなエディットが施された90年代ハウス(カットアップされたヴォーカル・サンプル、薄いエレクトロニクス、Strictly Rhythm調のドラム)で飾られ、MayがBerghainとしたらEdgarのセレクションはPanorama Barといったところだろうか。Edgar自身やMagdaやKyle Hallのトラックは世界的なスケールにおけるデトロイトの勢力の強さを現している。Edgarの"Semierotic"はデトロイトの地下水脈を流れるエレクトロ・ファンクを体現し、MagdaのトラックはDrexciyaの沸騰するようなテクノを連想させる。HallとKeroによる"Zug Island"も素晴らしく、騒々しいパーカッションと悪辣なアシッド・ラインに彩られた変化球で、そのルーツにはデトロイト・テクノ独自の実験精神が窺える。 こうしたハイライト的な部分や、テクノとハウスの境界線がソフトフォーカスとなってぼやけていくような感覚はあくまでも彼の選曲による妙のおかげだと言ってよく、アンミックスであることはその理由ではない。深夜のドラッグ・ミュージック的な趣を醸し出すEdgerのセレクションはそのトラックのデザインという点でもどっしりとしたベース・グルーヴや特徴的なテクスチャーを持ったエフェクト、反復性の強いサウンドなどで構成されており、午前6時のクラウドを最後の爆発に向けてじらしているかのようなムードをたたえている。全体を通して聴かずとも、そしてDJによってミックスされなくとも、このセレクションははっきりとした一体感を持っている。
  • Tracklist
      CD1: Chosen by Derrick May 01. John Beltran – Synaptic Transmission 02. Yotam Avni – Pentimento 03. Petar Dundov – Distant Shores 04. KiNK – Hand Made (Dub mix) 05. Kai Alce – Power Thru Pt 3 (Mush’s Sax Dub) 06. Deep’A & Biri – Hova 07. Carl Craig – Sandstorms 08. Federico Grazzini – Nova 09. Benny Rodrigues – It’s A Spiritual Thing 10. Andres – New For U CD2: Chosen by Jimmy Edgar 01. Jimmy Edgar – Let Yrself Be 02. Lando Kal – Clockin’ 03. Jimmy Edgar – Semierotic 04. Magda – Late Night Woodward 05. Kyle Hall & Kero- Zug Island 06. Coyote Clean Up – Mount Babe Bricks 07. Noel Jackson – That You Love Me 08. Darling Farah – Body 09. Magic Touch feat. N Dawson – Niks Groove 10. Kris Wadsworth – Connection 11. Axiom Crux – When Summer Doesn’t Come