Burial - Truant

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  • サウス・ロンドンから新しいBurialのトラックが生まれてくるときは、いつだってそのコミュニティを反映している。Burialの作品を聴けば、きっとサウス・ロンドンに住む他の多くのプロデューサーたちもほとんど同じようなサウンドを作っている姿が想像できるだろう。Hyperdubにおける影の実力者Will Bevanの2012年2枚目となるこのリリースも、まさにそうした種類のリリースだ。しかし、この"Truant"を最初に聴いたとき私の脳裏に浮かんだのは、なんてストレンジなトラックだろうということだ。おそらく世界中の人々が、すべてを裏切るようなエンディングや断片化された構成、不可解なメロディに騒然となるだろう。私がこれほどひとつの作品を精査しなければならないと感じたのは、彼のセルフ・タイトルのアルバムと最初に出会ったとき以来だろう。彼の音楽がこれほど幅広いリスナーからの熱っぽい反応を勝ち得るに到ったのはいったい何故だろう? 彼がこの作品の前に放った「Kindred」は彼のキャリア中でも最も「ビッグな」トラックであるが、そのトラックは以前にも増して長尺かつファットなもので、それまでの彼の基準に照らし合わせても遥かにエモーショナルであるという部分こそ印象的だった。今回もまたそうしたアプローチを彼は引き継いでいるのだが、"Kindred"や"Loner"にはわかりやすいクライマックスへのビルドアップが存在していたのに対し、ここに収められた2つの新曲にはそうした構成はなく、ただひたすら唐突に崩落しつづける。"Truant"での渦を巻くようなコード展開、ローリングなベースライン、繊細なヴォーカル・マニピュレーションはまさにBurialのトレードマークといったところだが、今回の場合はそれらが同期することはないのだ。劇的なモチーフはパーカッシブな混乱という波によって分断され、ヴォーカルはボロボロのキャンバスに引き摺られるように塗り付けられ、クライマックスは無慈悲に強制終了させられる。 14分にも及ぶ"Rough Sleeper"もまたそうした同種のトラックであるが、揺らめいて不確かさに満ちたトラックの中盤ではBevanの手掛けたトラックのなかでも最も美しい瞬間が味わえる。この世のものとは思えないベルが堂々たる響きを持って上空から降り注ぐと、類稀な祝祭感がすべてをクリアにしていく。EP全体がこの瞬間を引き立てるために緻密に構成されているかのようで、これまでのBurialのどの作品に比べてもまったく異なる種類の痛切さが感じられる。 もちろん、"Rough Sleeper"でのそうした荘厳さは後半のどこか2006年的なスタイルを思わせる威圧的なグルーヴに収束することでやがて硬質な印象に変わる。これを聴き終えたリスナーは、それもまでの26分間に起こったバラバラのピースのような体験を繋ぎ合わせるのに混乱するだろう。Burialはこれまでのフォーミュラでの成功体験に頼ることを拒否し、このEPでは敢えて斬新なアプローチへと転じたわけだが、その試みはまったくもって賞賛すべきものだと言えるだろう。
RA