- 現代的なクラブトラックをリリースし続ける信頼すべきレーベルとして、Tsubaはレーベル2作目となるこのアルバム・リリースでその評価にふさわしい内容を打ち出してきた。おそらくは、こうしたアルバムが(12インチでは切りにくい)単調なフロア・トラックを集めただけのものになりかねないのを承知の上で、レーベル・ボスのKevin Griffithsみずから「パーティ・トラックの配膳人」と称するThe Carter Brothersのアルバムはそうした単なるフロア・トラック・アルバムとは一風異なるものに仕立ててきた。そしてこのアルバムには、このオーストラリア人デュオが放つトラック群がなぜこれほど現代性を伴っているのかという疑問に対する答えが明白に示されている。彼らはここ数年のあいだに、主にMonty Lukeによる急成長中のレーベルBlack Catalogueから全開のディスコ・トラックやストリップ・ダウンされたテック・ハウスなど幅広いトラック群を量産している。
このアルバム『Metropolitan』においても、彼らはまさにそうした多様性のあるサウンドを展開している。全13トラックを通して、彼らはリスナーをひとつの小旅行に連れ出そうとしている。ハウス・パーティの賑やかさから始まり、夜道をクラブの暗闇に向けて歩いていくような具体音を絡めつつ、最後には家に戻りジョイントをふかしながらソファーに沈み込み、スペースアウトしたチル感覚に浸る。そのため、アルバムにはさまざまなスタイルがカヴァーされており、それは時折複雑な表情を見せるのだが、The Carter Brosは非常に巧みなプロデュースによってそれぞれのムードを明確に打ち出し、説得力をもってそれらを束ね、ニュアンスに満ちた夜のストーリーを紡ぎだしているのだ。
"Metrolude"では、地下鉄の駅に滑り込むようなハープシコードのサウンドがまるでこのアルバムがあらゆるジャンルを横断する実験であるかのような意図を滲ませ、ほかにもRedshapeのムーディーさをさらに拡大したかのような"Point Taken"や孤高のディープハウス、Revengeさながらのごった煮トラックまで幅広く展開する。それぞれのトラック単体ではそうしたストーリー性が希薄になるとはいえ、それでもダンスフロアーを幻惑させるには充分の強度を持ち合わせている。逆に言えば、このアルバムで彼らがそれぞれのパーツを非常に丹念に積み上げてひとつの大きなストーリーを構成しているかという証左でもある。The Carter Brosはまさしくその名が示す通り、愛すべきパーティ・トラックの配膳人なのだ。
Tracklist A1 Metrolude
A2 Treat Me Right
A3 Schooled
B1 The Do
B2 Forget About
C1 Too Many Lovers
C2 Use It
D1 Rank About
D2 Check Me