XDB / Kassem Mosse – Ekatem / Omrish

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  • ベルリンのディストリビューターであるDiamonds & Pearlsが手掛けるヴァイナル・オンリーのレーベルは2009年の立ち上げ以来4枚の12インチを残しているのみだが、そのレーベルからリリースしてきたアーティストはTobias Freund、Henrik Schwarz、そしてリミックスを提供したRicardo Villalobosなど錚々たる顔ぶれが並んでいる。控えめながらも力強いそのレーベルとしての姿勢は、リリースするトラックにおいて如実に反映されている。2012年も終わりに近づいたころに届けられたこの作品は、Diamonds & Pearlに馴染みの深いXDBとKassem MosseによるスプリットEPである。そのザラついた手触りの繊細なハウスは、何度も聴き返すごとに深く引き込まれるものだ。 XDBは"Ekatem"でトラック全体を覆い尽くすような繊細なハイハットに絡むシンセを軸に展開している。ベースがその他のエレメントをしっかりとナビゲートし、汚れたハンドクラップがアクセントとなって込み上げる力強さが現れると、にわかにメロディックな解像度が増す。ともすれば未完成な印象さえ与えかねないトラックだが、決して独りよがりなものではない。ぽろぽろと爪弾かれるようなベースが淡々とトラック全体を貫いているが、注意深く聴いていると長く引き延ばされたリヴァーヴの残像が浮かび上がってくる。 Bサイドの"Omrish"はXDBとKassem Mosseによるコラボレーション・トラックで、そのアトモスフェリックな高揚感は古いCarl Craigのトラックをこっそりと組み替えたような感覚を連想させる。木槌のようなサウンドの断片が二重打ちになったキックに絡み付き、浮かんでは消えたりを繰り返す。シンセは時折ディープさをともなって煌めき、それぞれの単音が際立ったそのトラックはスピーカーにもっと近づいてその閃光をもっとはっきりと体験したい気持ちにさせてくれる。
RA