Marcel Dettmann - Range

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  • Marcel Dettmannが昨年50 Weaponsから作品を発表した際、Jordan Rothleinは「彼の創る音楽にはある種の多様性があるのは確かだが、それは決してレンジの広いものではない」と評した。奇しくも彼の最新EPには「Range」というタイトルが冠せられ、徹頭徹尾テクノを貫きつつも、その無限に広がるガンメタルのような色彩からどれだけの色彩を引き出せるかというチャレンジに集中している。 ひっそりと始まるこのEPのタイトル・トラックは、不穏なドラムパターンを無線交信の合間に沈ませている。"Iso"でにわかにピッチを上げはじめ、地響きのようなパルスが興味深く揺れ、小刻みに振動するトラックの核をひとつながりのサウンドが取り囲む。"Quicksand"を思わせる、Dettmannにしては珍しいほど壮麗なトラックだ。いっぽう、"Push"はまるで吹きすさぶ突風に逆らって走っているような感覚で、凄まじいほどの速さでハイハットが駆け抜けていく。 耳の鋭いリスナーなら、このEPの最後に収録された"Allies"がBen Klock『fabric 66』での重要な転換点となったトラックであることにお気づきだろう。このトラックでは、それぞれのサウンドのパーツがどっしりとした重量感を持ち合わせている。これこそまさにDettmannならではの技巧における典型を呼ぶべきで、単音の減衰コードが執拗に繰り返され、各小節ごとにハイハットとスネアは高速で移動し、ほとんど不安にさせるほどのレベルまでプレッシャーを高めていく。他のDettmannテクノの例に漏れず、そこにテンションの解放やクライマックスは存在しない。いつものDettmannと言ってしまえばそれまでだが、決してリスナーを飽きさせない内容だ。