Dance - BLNK003

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  • Danceという名義からは、Blank Mindのレーベル・ボスであるSamuel Purcellのルーツ回帰的志向が読み取れるかもしれない。はたしてSamuel Purcellによるこの名義のデビュー・シングルには、たしかにクラシックなブレイクビーツを基調とした美しいファンク風味の2トラックが収められている。彼はJames Brown and Lyn Collins "Think (About It)"といったレイヴ定番ブレイクビーツを臆面もなく引っ張り出し、Rob Base and DJ E-Z Rock "It Takes Two"といったオールドスクール然としたサンプルを絡めてみせる。なぜわざわざ2012年にもなってこんなあからさまな作品を、と思うかもしれない。たしかに、あまりにも懐古趣味に寄り過ぎているきらいはあるものの、それだけでこの作品を片付けてしまうのは勿体ない。 両トラック共に、親しみやすさとストレンジの中間ギリギリのところでバランスしている。"Still"は「Hi Scores」期のBoards of Canadaを思わせる枯れた味わいのアルペジオや'88年ごろのヒップホップを彷彿とさせるほっそりとしたサックスのおかげでずいぶんキャッチーな第一印象で、単にブレイクビーツ・メインのトラックというだけではなく、低域もしっかりとしているしうっすらとしたリヴァーブも効いている。しかしなによりも、その控えめな構成にも関わらず神秘的とも言えるムードが封じ込まれているのが驚きだ。"Ha"もまた同様のシンプルなトラック構成だが、こちらのほうがより動的なエナジーが高い。Purcellのサンプラーからはじき出される、活き活きとしたスネアが耳を惹く。まるでかつてのジャングルのレコードを33rpmでプレイしているかのような趣もあり、ドラムスティックでゼリーを叩いているかのように動き回っている。
RA