Unspecified Enemies - Multi Ordinal Tracking Unit

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  • Unspecified Enemiesとは、90年代後期にLouis DigitalとSimon Walley (CiM) によって手掛けられていたコラボレーション・プロジェクトであり、その当時(1999年)にリリースされた12インチ"Multi Ordinal Tracking Unit"はグラスゴーのClub 69ではアンセムとして非常に愛されていた。その隠れた名盤が、このたびNumbersから装いも新たにリイシューされることとなったのだ。このトラックの強烈なインパクトは今もって衰えるところを知らず、135BPMで刻まれるリズムはまさしくテクノの疾走感とエレクトロのスウィング感を完璧に併せ持っており、ベースとミッドレンジはあたかも破れた網戸を駆け巡るようでもあり、トラック全体のグルーヴはPrince的なファンク感覚を時折はさみながら駆け抜けていく。このラフきわまりないサウンドには、当代的なロウファイ・テクノ的なお行儀の良さはまったく皆無と言って良い。硬質さを気取るどころか、原始的なAmigaチューンの骨組みを剥き出しにしているかのようでもある。Louis Digitalによる"City of Quartz"リミックスでは、彼自身のレーベルFootworkから2002年にリリースされたLaszlo Kovacs "Hostages for the Chase Manhattan"のパーツを再利用してアップデートしている。オリジナルが持つ身震いするようなスピリットをほぼ忠実に尊重した仕上がりだが、きらびやかなコードと注意深く足されたリヴァーブによってよりファットになった印象だ。 このEPの価値をさらに高めているのが、2曲収録されたUnspecified Enemiesの未発表トラックだ。"Belladona: I Do Mind Dying"には初期のApparatに共通するエモーショナルさがあるが、よりタフでドラムは純テクノ的だ。"Insurgency Soul"は深いパッドと軽快なヴォコーダーをエレクトロ調の2ステップに仕立てたような印象だ。時代性を超越した、まったく古びないサウンドである。
RA