Michael Mayer - Mantasy

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  • Michael Mayerに派手なhi-NRG的作風を期待しているリスナーは、今回の新作にがっかりするだろう。たしかに、この『Mantasy』は70年代ニューヨークのゲイ・バー的なサウンドを有してはいるが、Mayer自身が語るところによると、このサウンドはこれまでの彼のキャリアを通して最も果敢な挑戦を反映しているのだと言う。「間違った世界や不完全な海図、想像を超える困難、そういったものにおける狂気を表現しようというアイデアに捕らわれたんだ」とMayerは語っている。はたしてMayerはそうした音楽的な冒険を乗り越えたのだろうか?彼は「男の夢」を追うプロデューサーなのだろうか? おそらく、答えはイエスだ。しかも、このアルバムにはそれらを立証できるだけの材料が揃っている。これまでのMichael Mayerが歩んできたキャリアを知る人ならば、このサウンドはきっと慣れ親しんだものであるはずだし、鋭いリスナーならその独自のサウンドの特徴を言い当てることができるはずだ。"Rudi was a Punk"は軽やかなロカビリー調のリズムに彼がSupermayerのアルバムで特徴的に展開していたEnnio Morricone的でドラマティックなシロフォンを再援用し、これまたKompaktらしい(ほとんど安っぽくすらもある)ブラスを万遍なく重ねている。そうしたモチーフ自体は、まったくと言って新しいものではないかもしれない。しかし、Mayerはそうしたモチーフをユニークかつ手癖を避けた方法で用いることにより、この『Mantasy』はここ数年のKompaktサウンドの手法を大胆に象徴しているといえる。『Total』コンピレーションの最新作にはまるで未成熟な実験成果を寄せ集めたかのような側面もあったが、Mayerはそれらに一貫した調和性を持たせることで実になめらかなかたちに整合させているのだ。 ほとんどの局面において、この『Mantasy』には堂々たるスウィートな瞬間が詰め込まれている。ビートがその存在感をはっきりと示しはじめるのは、7曲目まで待たねばならない。彼がかつて『Immer』ミックスシリーズでも実証していたように、彼はダンスフロアー的な技巧に由来するトリックよりも瞑想的なムードを着実に創出することに対してより強く興味を持っているようだ。"Sully"はむせ返るほどの濃密さで迫り、まるでLindstromがアマゾンのジャングルの中にぽっかりと空いた空間で星を見つめているかのようだ。Space Odyssey的なサウンドの色彩とブラスに彩られた"Lamusetwa"も同様に、その推進力に満ちたブレイクビーツを別にすれば、グルーヴよりも瞑想的な空間に主眼を置いている。アルバムタイトルトラックとなる"Mantasy"はグイグイと前に進む、Viewlexxスタイルのイタロ・オマージュだが、"Roses"や"Baumhaus"の美しさは絶妙にギヤを落としてくれる。ベルやハープ、鳥の鳴き声、そしてもの悲しげな木立の風音に彩られた"Baumhaus"はまるでBjorkのデビューアルバムからこぼれ落ちたトラックのようにさえ思える。 純粋主義者的なテクノ・リスナーはこうしたスウィートな音楽的展開には辟易としてしまうかもしれないが、アルバム後半の展開には満足するはずだ。Mayerはいまでもロックすることができる。"Voigt Kampff Test"や、より軽やかな"Neue Furche"(ハイテンションなピッチ・ベント・エレクトロとハードバッグ・ハウス的ベース・パターンの奇妙な融合)はハードで跳ねるような質感を持ったトラックで、ダークな空間で映えること請け合いだ。しかし、アンセムはまだまだアルバム最終盤に隠されている。WhoMadeWhoのJeppe Kjellbergをヴォーカルに迎えた"Good Times"はまるでCeCe Rogersのシカゴハウス・クラシックさながらの雰囲気をたたえており、それをヨーロッパの音楽オタク流のヒップさで解釈したかのようでもある。それはまるで機能主義的な思想に支配されたダンス・ミュージックに対するアンチ・マテリアリスト的スタンスからの返答のようでもあり、2012年版の"Promised Land"とでも言えそうなトラックだ。この曲自体もかなりのものだが、やはりアルバム全体の仕上がりこそ賞賛すべき仕上がりなのだ。