Robert Hood - Torque One

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  • 1枚のニュー・アルバムが発表されるにあたり、その過程でいったいどれだけのアルバム未収録トラックが生まれ、お蔵入りとなるのだろう?このRobert Hoodの最新12インチのBサイドに収録された"Movement"というトラックは、アルバムの収録から漏れたトラックであり、今回ラッキーなことに日の目を見ることとなった。Hoodが先頃リリースしたアルバム『Motor: Nighttime World 3』のレビューにおいてTony Naylorはこの作品中に通底する濃密なヒューマニズム的感覚について指摘していたが、その感覚はもちろんこの"Movement"にもしっかりと息づいている。美しくもほろ苦いストリングスが人間らしいタッチで奏でられ、そこに非人間的なまるでテルミンのように無機質なトーンが対比されるという組み合わせは実に印象的だ。その2つのエレメントはゆっくりとダンスを躍るように絡み合い、整然と並べられたタムが穏やかな時間の流れを支えている。アルバムでもすでに発表済みとなっているAサイドの"Torque One"はそれに比べるとやや魅力に欠けるかもしれない。このトラックでは、4/4ドラムに柔らかなコードが敷き詰められているが、その穏やかな律動は"Movement"でのストリングスのクリスピーさに比べるとやや印象は薄くなってしまう。とはいえ、かすれたシンセや毛羽立ったパーカッションなど、このトラックに込められた細かなディテールはやはり秀逸で、凡百のトラックとは一線を画していることに間違いはない。『Motor』ですでに証明された通り、Robert Hoodの才能はいまなお健在といったところだ。
RA