Marcel Fengler - Frantic EP

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  • Ostgut Tonが抱えるアーティスト・ロースターの中でも、Marcel Fenglerほど円熟したアーティストはいないように見える。最初にリリースした2枚のシングルで見せた灰褐色の混沌を経て、「Twisted Bleach」では濃密なループに満たされた硬質なアプローチを披露した。「Twisted Bleach」はやりたいことが多方向に散らばってしまっているきらいもあったが、リリースごとにそのフォーカスが研ぎすまされてきているのも確かだ。そしてこの「Frantic EP」において彼はついにそのアプローチを最も研ぎすまされた状態に仕上げてきたようだ。もはや彼はかつてRAのAndrew Ryceが評したような「Ostgut Tonのダークホース」的存在ではない。ここに収められているのは、Fenglerならではの独創的なトラック群だ。 "Frantic"はまさにFenglerがこの2年ほど取り組んできたアプローチの結晶のようなトラックだ。エレメントごとに単独で聴き分けることが困難なほどの濃密さを持ったこのトラックは驚くべきバランスと巧妙なサウンドデザインの上に成り立っている(無数のキーボード・スタブやハイハット、カウンターメロディが渾然一体となっているこのトラックが、かつてBerghainのクローク係であった男の手によるものだと思えば尚更感慨深い)。次の2曲で、Fenglerはさらなる未来を見据えている。"6 in a Row"は彼のもうひとつの側面であるジェントルなリズム感覚がにじみ出ているが、中盤での眩しく渦を巻くビッグルーム調のシンセのダイレクトさはトラック自体の静謐なムードをパワフルに盛り立てている。とはいえ、"Mosaique"の存在感はやはり異例だ。吹けば飛ぶような(あえて言わせてもらえれば)優美なメロディを持つこのトラックはまるでMacroからRobert Hoodがリリースしたらこんなトラックになるのではと思わせる部分もあり、その隙間から時折こぼれ落ちる狂ったエナジーも実に興味深い。